2017年の景気見通しに対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2016年11月特別企画 -

 

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2016年12月14日
株式会社帝国データバンク

2017年の懸念材料、「米国経済」が急増

〜トランプノミクス、日本経済に「マイナス影響」が4割〜


はじめに

 2016年12月8日に発表された7〜9月期の実質GDP成長率2次速報は前期(4〜6月期)比0.3%増、年率換算で1.3%増と、3四半期連続のプラス成長となった。また、住宅着工戸数の増加や有効求人倍率の上昇が続くなど改善傾向を示す指標がある一方、個人消費は依然として足踏み傾向がみられており、業種や地域で景況感の格差が表れている。
 帝国データバンクは、2016年の景気動向および2017年の景気見通しに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2016年11月調査とともに行った。なお、景気見通しに対する調査は2006年11月から毎年実施し、今回で11回目。


※調査期間は2016年11月16日〜30日、調査対象は全国2万3,850社で、有効回答企業数は1万110社(回答率42.4%)。

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 2016年の景気動向、「回復」局面だったと判断する企業は5.7%となり、前回調査(2015年11月)から1.8ポイント減少。他方、「踊り場」局面とした企業は53.9%と2年連続で5割超、「悪化」局面は19.3%と前回とほぼ同水準、「分からない」は21.0%と調査開始以降で最高
  2. 2017年の景気見通し、「回復」を見込む企業は11.0%で、2016年見通し(2015年11月調査)とほぼ同水準。「悪化」や「踊り場」局面を見込む企業が減少した一方、「分からない」が調査開始以降で初めて3割を超え、先行き見通しに対する不透明感が一段と高まっている
  3. 2017年景気への懸念材料は「米国経済」(41.8%、前年比30.1ポイント増)が最多。2位は「原油・素材価格(上昇)」、3位は「人手不足」。前回トップだった「中国経済」(21.0%、同25.4ポイント減)、2位だった「消費税制」(12.6%、同25.1ポイント減)は大幅に減少
  4. 景気回復のために必要な政策、「個人消費拡大策」「所得の増加」「年金問題の解決(将来不安の解消)」「個人向け減税」「公共事業費の増額」が上位5項目にあげられる。「出産・子育て支援」や「介護問題の解決」を重要施策と捉える企業も2割前後
  5. トランプ次期米大統領の経済政策が日本経済に与える影響は、「プラスの影響」が9.9%、「マイナスの影響」が37.8%、「影響はない」が10.3%、「分からない」が42.0%

1. 2016年の景気、「踊り場」と捉える企業が2年連続で半数超、不透明感漂う一年

 2016年の景気動向について尋ねたところ、「回復」局面であったと回答した企業は5.7%となり、2015年の景気動向(2015年11月調査)から1.8ポイント減少した。他方、「踊り場」局面とした企業は53.9%と2年連続で5割を超えたほか、「悪化」局面とした企業は19.3%と前回調査とほぼ同水準となった。また、「分からない」は21.0%と調査開始以降で最も高かった。
 「回復」局面とみている企業からは「非常に緩やかであるが、景気は徐々に回復している」(一般産業用機械・装置製造、静岡県)や「全国的に引き合いが活発で新規取引が増えてきた」(事業サービス、東京都)、「日銀の金融緩和やインバウンド需要によって支えられた」(貸家、東京都)など、緩やかに景況感の回復を実感しているという意見がみられた。しかし、「踊り場」局面が半数超を占めるなかで、「上昇に転じそうでなかなか決定打が見えてこない」(石工工事、三重県)や「全体の景気が回復したとは思えないが、限られた部門での景気回復は感じられる」(食料・飲料卸売、福岡県)といった、業種や企業間で現状の景気動向が二極化している様子もうかがえる。
 「悪化」局面とした企業からは、「販売価格が上がらずデフレから抜け出せていないなか、消費者の節約志向に歯止めがかからない」(ガソリンスタンド、新潟県)や「人手不足で仕事があっても回らない」(和洋紙卸売、栃木県)などの声がみられた。また、「分からない」では、「政府の施策が地方や中小企業には波及していない」(利用運送、愛媛県)や「建設関連業界は東日本大震災の影響で景気に関係なく大きな需要が生まれたため、現在はその反動期にある。したがって全体景気とかなりずれがある印象」(建設機械器具賃貸、東京都)といった意見があがった。
 アベノミクスは開始から4年目を迎えたが、2016年の景気動向を回復局面と捉える企業は1割弱にとどまり、じわじわと減少している。他方、「踊り場」局面とする見方は2年連続で半数を超えているほか、「分からない」とする企業も10年ぶりに2割を超え、過去最高の割合となった。2016年の景気に対して半数超の企業が「踊り場」局面と認識していたなかで、判断を留保する企業も多く、不透明感の漂う一年だったと言えよう。

 


2. 2017年の景気見通し、「踊り場」「悪化」を見込む企業が減少、「分からない」が急増

 2017年の景気について、「回復」局面を迎えると見込む企業(11.0%)は2016年見通し(2015年11月調査、11.3%)とほぼ同水準だった。「悪化」や「踊り場」局面になると見込む企業が2016年見通しより減少した一方、「分からない」とする企業が調査開始以降で初めて3割を超え、先行き見通しが一段と難しくなっている様子がうかがえる。
 規模別でみると、「悪化」と見通す企業の割合は「小規模企業」が「大企業」より5.5ポイント高く、規模の小さい企業ほど厳しい見通しを示していることが浮き彫りとなった(7ページ参考表参照)。業界別では、『小売』の「回復」と見通す企業の割合が4.7%と最も低く、『農・林・水産』も7.1%と1割未満にとどまる。両業界とも「回復」が「悪化」より20ポイント以上低くなっており、個人消費や農林水産関連で特に厳しく見込んでいる。
 「回復」を見込む企業からは「東京五輪関連や北陸新幹線工事の本格化」(鉄骨工事、石川県)や「東南アジア経済が活発になれば、より売り上げ増が見込める」など、個別事由や海外経済の活発化に期待する声がみられたほか、「悪化」とする企業からは「会社が給与の総支給額を上げても、社会保険料などで手取りが減少傾向にある」(建築工事、和歌山県)といった意見もあった。しかし、全体を通してみると、「米国大統領にトランプ氏が就任することで打ち出される新たな政策」(塗工紙製造、愛媛県)など、次期米国大統領による経済政策の行方に対する懸念を持つ企業が非常に多かった。

3.  「米国経済」の動向を懸念する企業が前年より30.1ポイント増

 2017年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、「米国経済」が41.8%で最も高かった(3つまでの複数回答、以下同)。「米国経済」は前回調査(2015年11月)から30.1ポイント増加しており、トランプ次期大統領が打ち出す経済政策による米国経済への影響を懸念する企業が急増していることが浮き彫りとなった。逆に、前回トップだった「中国経済」は同25.4ポイント減の21.0%、前回まで2年連続で2位だった「消費税制」は同25.1ポイント減の12.6%となっており、景気の懸念材料はこの1年で大きく様変わりした。また、「原油・素材価格(上昇)」は28.5%で2位、「人手不足」は28.4%で3位となっており、景気を左右する重要項目として上位にあげられた。
 業界別にみると、「米国経済」では『金融』や『製造』など5業界、「原油・素材価格(上昇)」では『運輸・倉庫』が4割を超える企業で景気への懸念材料として挙げている。また、「人手不足」は『建設』と『運輸・倉庫』が4割超となっており、「業界内の人手不足は深刻になりつつある」(一般管工事、東京都)など、発注量と比較して人手の足りないことが収益を悪化させると懸念している様子もうかがえる。
 企業からは、「トランプ新米国大統領の政策が大きく景気へ影響する」(板ガラス加工、福岡県)や「米国の経済政策や対日・対世界に対する方向性が不透明なため、どのように影響を及ぼすのか具体的にイメージしづらい」(建築工事、東京都)といった、米国経済の先行き不透明感をあげる企業が多かった。また、「このままではデフレに逆戻りして景気が滞っていく」(自転車小売、大阪府)など、デフレ脱却の遅れを指摘する声もみられた。


4. 景気回復に必要な政策、「個人消費拡大」「所得増加」「年金問題の解決」がトップ3

 今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、「個人消費拡大策」が42.9%(複数回答、以下同)と3年連続で4割を超え、5年連続のトップとなった。次いで「所得の増加」「年金問題の解決(将来不安の解消)」「個人向け減税」「公共事業費の増額」「法人向け減税」が3割を上回った。企業は、今後の景気が回復するために、所得増加や将来不安の解消を通じた個人消費の拡大が依然として重要な課題と捉えているとともに、地域経済を下支えする公共事業や企業の競争力向上を図る法人向け減税を求めていることが浮き彫りとなった。
 また、政府の成長戦略の柱となる女性活躍に関しては、「出産・子育て支援」(20.5%)や「介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)」(18.3%)が2割前後となった。
 企業の声としては、「雇用の機会を増やすことが一番重要。働く機会が得られれば所得を得る人口が増え、消費活動が行われる」(機械器具設置工事、東京都)や「配偶者控除を見直すくらいなら、少子化問題に対処するため子供の人数が多くなるほど所得税が低減される制度にすべき」(燃料小売、岩手県)、「個人の贈与税や相続税についてももっと積極的な施策を出してほしい」(舗装材料製造、群馬県)といった、消費拡大につながる政策を必要とする意見が多かった。また、「子育て世代に対しての支援は先行すべき」(男子服小売、東京都)や「年金・介護問題の制度改革が必要」(精密機械器具卸売、群馬県)といった、子育て支援や年金問題の解決を求める意見も聞かれた。


5. トランプノミクスの影響、日本経済に「マイナス」「分からない」が4割で拮抗

 11月9日(日本時間)、米大統領選挙で共和党候補のトランプ氏が勝利した。選挙期間中の発言等が報道されるなか、大統領就任後の経済政策(トランプノミクス)や対日政策への注目が高まっている。
 そこで、トランプ次期米大統領による経済政策(トランプノミクス)が、日本経済にどのような影響を与えると思うか尋ねたところ、「プラスの影響」と回答した企業は9.9%と1割未満にとどまった。他方、「マイナスの影響」は37.8%で4割近くに上った。また、「影響はない」は1割程度だったほか、「分からない」が42.0%と、4割超の企業がトランプノミクスによる影響を測りかねていることが明らかとなった。
 「マイナスの影響」があると回答した企業を業界別にみると、『農・林・水産』(46.4%)と『金融』(44.3%)が4割を超えている。他方、『不動産』は34.7%にとどまり、最も高い『農・林・水産』より11.7ポイント低く、業界によりトランプノミクスが日本経済に与える影響について温度差が表れる結果となった。企業はトランプ氏の経済政策に対して不明な部分が多いと考えつつも、日本経済への影響を慎重かつ厳しくみている様子がうかがえる。


まとめ

 2016年の景気は、「踊り場」局面と考える企業が2年連続で半数を超えた一方、「分からない」とする企業も10年ぶりに2割を超え過去最高の割合となるなど、不透明感の漂う一年だった。業種や企業間で景気動向が二極化している様子もうかがえた。
 さらに、2017年の景気を「踊り場」「悪化」局面と見込む企業は前回調査より減少し、「分からない」と回答した企業が大きく増加しており、先行きへの見通しが一段と難しくなったとみている傾向も表れた。
 とりわけ、懸念材料として「米国経済」を挙げる企業が急増した。トランプ次期米大統領の経済政策(トランプノミクス)や対日政策に対する方向性が不透明なこともあり、日本経済にどのような影響を及ぼすか測りかねているようだ。トランプノミクスが日本経済に「マイナスの影響」を与えると考えている企業は約4割となる一方、どのような影響があるか「分からない」とする企業も4割を超えている。トランプノミクスに対しては不明な部分が多いものの、企業は日本経済への影響を慎重かつ厳しくみている様子がうかがえる。
 加えて、石油輸出国機構(OPEC)加盟国に加えて非加盟国においても原油の減産で合意するなど、「原油・素材価格(上昇)」も懸念している。さらに、「人手不足」は依然として懸念材料として上位にあげられる。他方、「中国経済」や「消費税制」は前回調査から大幅に減少しており、景気の先行きに対する懸念材料はこの1年で大きく様変わりした。今後の景気回復に向けて、企業は個人消費拡大策や所得増加、年金問題など将来不安の解消を通じて、個人消費が活発化することが重要と考えている。
 2016年の企業の景況感は、年初から年央にかけて悪化傾向をたどったものの、9月以降は3カ月連続で改善して推移している[「TDB景気動向調査2016年11月」(帝国データバンク)]。海外動向に先行き不透明感が漂うなか、今後、日本経済が自律的な好循環を達成するため、政府は消費活性化と企業業績の改善に向けた政策を一段と推し進める必要性が高まっている。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,850社、有効回答企業1万110社、回答率42.4%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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