事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査
(2017 年5 月)

- TDB景気動向調査2017年5月特別企画 -

 

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2017年6月14日
株式会社帝国データバンク

BCP策定意向企業は半数以下にとどまる

〜BCP策定による効果、業務の効率化や取引先の信頼向上も〜


はじめに

 近年、自然災害や情報セキュリティ事故など、さまざまなリスクによる企業活動への影響を想定し、企業活動を休止することなく、あるいは早期復旧させるなどして事業を継続させるため、予め防災・減災対策、災害発生時や発生後の対応措置などに対する重要性が高まっている。また、BCPがより効果的なものになるための地域との連携に関する議論が活発に行われている。
 そこで、帝国データバンクは、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2017年5月調査とともに行った。なお、事業継続計画(BCP)に関する調査は、2016年6月調査に続き2回目。
※調査期間は2017年5月18日〜31日、調査対象は全国2万3,983社で、有効回答企業数は1万142社(回答率42.3%)

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。
※本調査に関する詳細な分析結果は、TDB REPORT 146号(2017年6月27日発刊予定)に掲載


調査結果(要旨)

  1. 事業継続計画(BCP)の策定状況は、「策定している」企業が14.3%にとどまる。「現在、策定中」「策定を検討している」を合わせても半数に満たず。業界別では、策定しているのは『金融』が43.8%で最も高く、『不動産』は9.5%で最も低い

  2. 「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」企業のうち、事業の継続が困難になると想定しているリスクでは、「自然災害(地震、風水害、噴火など)」(71.8%)、「情報セキュリティ上のリスク」(39.1%)、「設備の故障」(38.8%)が上位。事業中断リスクに備えて実施・検討していることでは、「従業員の安否確認手段の整備」(70.6%)、「情報システムのバックアップ」(63.9%)、「事業所の安全性確保」(45.2%)が上位

  3. BCP策定の効果について、策定済みの企業では、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」が41.4%でトップ、以下、「事業の優先順位が明確になった」(36.9%)、「取引先からの信頼が高まった」(25.7%)が続く。特に、小規模企業では、「事業の優先順位が明確になった」(44.3%)が最高

  4. BCPを策定していない理由は、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が45.1%でトップ。以下、「策定する人材を確保できない」(30.3%)、「書類作りでおわってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(25.7%)が続く

  5. 地域との連携状況、「平時からの連絡体制の整備」が42.7%で最も高い。以下、「災害時の物資の提供」(17.7%)、「災害応援協定の締結」(12.0%)が続く

1. 事業継続計画(BCP)、「策定している」企業は14.3%にとどまる

 自社における事業継続計画(BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」と回答した企業は14.3%にとどまった。また、「現在、策定中」7.3%、「策定を検討している」22.1%を合わせても43.7%と半数に満たず、BCPの策定が進んでいない実態が浮き彫りとなった。
 BCPを「策定している」企業を業界別にみると、『金融』が最も高く43.8%だった。次いで、『農・林・水産』が24.1%で2割を超えていた。他方、『不動産』は9.5%と1割を下回っていた。また、従業員数別では、従業員数が5人以下の企業でBCPを策定している割合は、1,000人超の企業と比べて10分の1にとどまるなど、業界や従業員数により策定状況は大きく異なっている。
 企業からは、「顧客の調査項目に、本年度から事業継続計画が追加されたため、策定を進めている」(機械工具製造、長野県)や「事業継続の観点から必須のもの」(土木建築サービス、東京都)など、BCP策定が取引条件になったことや、事業継続に必須といった意見がみられた。「BCPの前段階である防災マニュアルを作成しているが、今後BCPに発展させる予定」(各種商品小売、秋田県)や「地震があまり起こらないと想定されている地域なので、BCPは非常に簡易なものにとどめている」(建築工事、北海道)など、自社の状況で簡易な計画策定にとどめているという意見もあった。また、「必要と思われるが、具体的に何からどう行えばよいか分からない」(セメント卸売、東京都)や「企業を含めた事業継続計画の策定・実践は、自治体が主導的に取り組む必要性を感じる」(木製建具工事、福岡県)など、策定ノウハウの不足や自治体の役割を指摘する声もあがった。





2. 想定リスク、「自然災害」が7割超でトップ、「情報セキュリティ上のリスク」が続く

 事業継続計画(BCP)について「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」のいずれかを回答した企業4,427社に対して、どのようなリスクにより事業の継続が困難になると想定しているか尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が71.8%となり、突出して高かった(複数回答、以下同)。次いで、「情報セキュリティ上のリスク」(39.1%)、「設備の故障」(38.8%)、「火災・爆発事故」(36.7%)、「自社業務管理システムの不具合・故障」(36.1%)が上位にあがった。
 規模別では、大企業が多くのリスクを想定する傾向がみられる。とりわけ「自然災害」「情報セキュリティ上のリスク」「自社業務管理システムの不具合・故障」などを「大企業」がリスクと捉える傾向が如実に表れている。また、インフルエンザや新型ウイルス、SARSなどの「感染症」は、従業員数が1,000人超の大企業では41.4%がリスクとして考えている。他方、「取引先の倒産」は、「小規模企業」(36.1%)が「大企業」(22.9%)を13.2ポイント上回るなど、規模の小さい企業ほど事業の継続性に対して深刻に捉えていることが浮き彫りとなった。
 業界別にみると、すべての業界で「自然災害」が最も高い。「情報セキュリティ上のリスク」は『金融』(60.6%)、「設備の故障」は『製造』(55.1%)、「火災・爆発事故」は『製造』(48.0%)、「自社業務管理システムの不具合・故障」は『金融』(49.3%)、「物流の混乱」は『運輸・倉庫』(47.1%)がトップだったほか、「取引先の倒産」は『卸売』(35.5%)や『建設』(32.5%)で3割を超えた。

 

3. 事業中断リスクへの備え、「従業員の安否確認手段の整備」が70.6%でトップ

 BCPについて「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」のいずれかを回答した企業4,427社に対して、事業が中断するリスクに備えて、どのようなことを実施あるいは検討しているか尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の整備」が70.6%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「情報システムのバックアップ」(63.9%)が6割を超えたほか、建物の耐震補強や設備の転倒・落下対策などの「事業所の安全性確保」(45.2%)、「調達先・仕入先の分散」(33.0%)、「災害保険への加入」(32.9%)が続き、いずれも3割超となった。「大企業」ほど複数の対策を講じているなか、「事業中断時の資金計画策定」は2割を超える「小規模企業」が事業中断リスクに備えており、資金面について規模が小さくなるほど対策に取り組んでいる実態が表れた。
 企業からは、「BCPの個人レベルの対処方法(手順書)を全社員に配布」(港湾運送、愛知県)や「非常食の確保(全従業員3日分の水と非常食を確保)」(映画・ビデオサービス、東京都)、「他拠点からの物流フォローや、支援物資などの搬送」(一般貨物自動車運送、神奈川県)、「出社できなくなる事態に備えて、在宅業務ならびにネット上での会議を可能とする環境を全社員の自宅に設置」(パッケージソフト、東京都)など、さまざまな対策を実施している様子がうかがえる。

4. BCP策定の効果、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」が41.4%でトップ

 BCPを「策定している」と回答した企業1,448社に対して、策定したことによりどのような効果があったか尋ねたところ、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」が41.4%でトップとなった。次いで、「事業の優先順位が明確になった」(36.9%)、「取引先からの信頼が高まった」(25.7%)、「業務の改善・効率化につながった」(25.6%)が上位にあがった。とりわけ、「小規模企業」では「事業の優先順位が明確になった」が44.3%にのぼり、BCP策定を通じて自社の事業内容を捉えなおすきっかけになっていることも明らかとなった。
 企業からは、「トラブル発生時の対処法が明確になった」(ソフト受託開発、新潟県)や「問題に対し、強固な対策をとっていることを顧客にアピールすることにより、信頼度が増している」(税理士事務所、福岡県)、「公的機関からの認可が下りた」(化学製品卸売、岡山県)など、業務改善だけでなく、顧客からの信頼や許認可などに対する効果を指摘する声もあがった。

5. BCPを策定していない理由、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が45.1%でトップ

 BCPについて「策定していない」企業4,697社にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が45.1%で最も高かった。また、「策定する人材を確保できない」(30.3%)や「策定する時間を確保できない」(24.7%)など、人材や時間の不足によってBCPを策定できないと考えている企業も多い様子が浮き彫りとなった。さらに、「書類作りでおわってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(25.7%)といったより実効性をともなう内容とすることに不安を抱いている様子もうかがえる。他方、「必要性を感じない」(24.0%)や「自社のみ策定しても効果が期待できない」(22.0%)といった、BCPの必要性や他企業の取り組み状況も策定していない理由としてあげられた。
 企業からは、「日々の業務に追われ、策定の必要性の優先順位が低いので策定の余裕がない」(冷暖房設備工事、北海道)や「他社に依存する部分が多いため、自社のみで策定しても実効性が薄い」(電気機械器具卸売、東京都)、「災害事象の種類や規模などにより対策が異なってくると予想されるため、前提が明確にできない状況で基本事項だけを策定しても実際には使用できないと考えている」(一般電気工事、山梨県)といった意見がみられた。

6. 地域との連携、「平時からの連絡体制の整備」が42.7%でトップ

 近年、BCPがより効果的なものとなるためには、地元自治体や住民、域内他企業との連携が重要な要素になるという地域連携BCPに関する議論が活発に行われている。そこで、地域との連携についてどのようなことを行っているか尋ねたところ、「平時からの連絡体制の整備」が42.7%で最も高かった。次いで「災害時の物資の提供」(17.7%)、「災害応援協定の締結」(12.0%)、「地方公共団体等のシンポジウム・避難訓練」(11.8%)、「災害時支援の実践のための合同訓練」(11.6%)、「災害時相互情報交換方法の取り決め」(11.0%)、「災害時の従業員派遣・ボランティア活動支援」(10.5%)が1割を超えていた。
 企業からは、「社員やパートタイマーの地域への参加を通じた地域ネットワーク、経営者の自治体幹部との人脈形成、工業団地内のネットワーク形成などによる地域連携が主体」(肥料・飼料卸売、茨城県)や「災害時に避難場所として場所を提供」(変圧器類製造、愛知県)などの意見が聞かれた。一方、「地元自治体や住民との連携までには至っていない」(ソフト受託開発、大阪府)や「自治体と企業との連携は積極的に行われていない」(プリント回路製造、静岡県)など、地域連携はあまり進んでいないという声もあがった。

まとめ

 大規模地震や台風、豪雨災害、あるいは伝染病や戦争・テロ、不正アクセスなど、緊急事態が発生した時に事業を継続させるための計画である「事業継続計画(BCP)」の策定に対する重要性が高まっている。しかし、すでにBCPを策定した企業の割合は1割を超える程度で推移しており、BCP策定は必ずしも進んでいない実態が浮き彫りとなった。BCPを策定・検討するなかで想定するリスクは、自然災害のみならず、情報漏出につながりかねない情報セキュリティ上のリスクや自社業務管理システムの不具合・故障など、デジタル情報の取り扱いを想定している企業も多い。
 BCP策定による効果では、業務の定型化・マニュアル化による効率性の向上や取引先からの信頼獲得なども大きな効果となっている。また、小規模企業では、BCPの策定を通じて自社の事業内容を捉えなおすきっかけともなっている様子がうかがえる。しかしながら、策定に必要なノウハウやスキルの不足のほか、時間や人材の獲得が困難なことも、BCP策定におけるハードルになっている。さらに、地域連携BCPに対する議論の活発化は事業継続において地域との関わりが重要であることを示しており、BCPが効果を持つために自治体との連携も欠かせないといえよう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,983社、有効回答企業1万142社、回答率42.3%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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