法人税改革に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2017年12月特別企画 -

 

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2018年1月23日
株式会社帝国データバンク

賃上げは3割、設備投資は2割が実施予定

〜改革への認知度高いほど、賃上げ・設備投資意欲高く〜


はじめに

 現在、各国は法人税率の引き下げなど、税制から企業の競争力向上を支援する政策を打ち出している。政府は、働き方改革の推進や生産性向上に向けた税制改革にあたり、賃金や先進技術の投資を増やした企業に対して、負担額の軽減を図る法人税制を検討する一方、これらに消極的な企業に対する優遇措置の見直しなどの方針を掲げている。こうしたなか、2017年12月14日、与党は平成30年度税制改正大綱を公表した。
 そこで、帝国データバンクは、法人税改革に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2017年12月調査とともに行った。


※調査期間は2017年12月18日〜2018年1月9日、調査対象は全国2万3,113社で、有効回答企業数は1万168社(回答率44.0%)。
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。


調査結果(要旨)

  1. 法人税改革への認知度、「内容を含めて知っている」企業は4.9%。「概要のみ知っている」の67.9%と合わせると72.8%となり、企業の7割超が少なくとも法人税改革の要旨を認知

  2. 今回の法人税改革を受けて、賃上げは企業の30.3%、設備投資は20.3%が「実施する(予定含む)」と回答。賃上げは従業員数6〜100人以下の企業で3割超、設備投資は21〜1,000人以下の企業で2割を超える。賃上げは資本金による実施意向に差がみられるものの、設備投資は賃上げほど大きな違いが表れていない。ただし、認知度によっても実施意向に差が表れる。特に、資本金1億円以下で「内容を含めて知っている」企業では52.5%が賃上げを実施予定

  3. 法人課税制度改革で政府に求める政策は、「法人実効税率の引き下げ」が48.0%で最も高い。次いで、「法人税減税」(36.1%)が3割台、さらに「補助金や助成金の拡充」(28.2%)や「税制の簡素化」(27.7%)が続いた。他方、「法人実効税率の引き下げ」「外形標準課税の見直し」は大企業で高く、「法人事業税減税」「法人住民税減税」「法人税減税」「固定資産税の見直し」は中小企業で高かった

  4. 今回の法人税改革による日本経済活性化への寄与では、「寄与する」と回答した企業が28.6%、「寄与しない」が26.2%でほぼ二分された。ただし、「分からない」が45.3%と半数近くにのぼり、多くの企業で日本経済全体に与える影響について判断しきれていない様子がうかがえる

1. 法人税改革、企業の7割超が少なくとも要旨について認知

 現在、政府や各党において議論が行われている法人税改革について、どの程度知っているか尋ねたところ、「概要のみ知っている」と回答した企業が67.9%で最も高かった。また、「内容を含めて知っている」(4.9%)と合わせると72.8%となり、企業の7割超が少なくとも法人税改革の要旨を認知していた。他方、「知らない」は19.2%となり、約2割の企業が法人税改革について認知していなかった。
 企業からは、「国際競争力強化の観点からも法人税改革は必要不可避な課題。高額納税企業ほど税額控除の恩恵を受けられるような仕組み作りを望む」(電子部品製造、山梨県)や「政府の方向性は賃上げと生産性向上であり、法人税改革はその支援策としての性格が出ている」(水産食料品製造、愛知県)、「設備投資などの支出は、税引き後利益への影響も大きな判断材料となるので、法人税改革によって企業の設備投資意欲を高め、働き方改革による人件費上昇への優遇策は有効になると思う」(電気機械器具卸売、長野県)といった、今回の法人税改革を積極的に捉える意見がみられた。
 他方、「ここ数年の法人税改革は、大企業に優しく中小企業にはあまり優しくないと思う。もっと中小企業に対しても効果が出る改革を行ってほしい」(建築用金属製品製造、石川県)といった、法人税改革が大企業優遇になっているという見方も多くあがった。また、「いくら税金が下がっても、人手不足で仕事を増やすことができない。法人税改革より、外国人労働者の雇用推進など人手不足対策を立ててもらいたい」(一般貨物自動車運送、静岡県)や「法人税改革などは些末な問題にすぎない。改革はもっと将来を見据えた明確な目標提示と行動が必要で、その答えを世界に示すべき」(産業廃棄物処分、大阪府)など、税制改革においては法人税以外も重要になると指摘する声も聞かれた。


2. 賃上げは約3割、設備投資は約2割の企業が実施予定、認知度により反応に違いも

 2018年度与党税制改正大綱では、生産性向上のための設備投資や持続的な賃上げを積極的に行う企業の税負担を軽減する一方、消極的な企業に対しては一部の優遇制度(租税特別措置)を見直す方針が示されている。
 そこで、今回の法人税改革を受けて賃上げを実施するか尋ねたところ、「実施する(予定含む)」と回答した企業は30.3%、「実施しない(予定含む)」は16.9%、「検討中」は29.5%となり、企業の約3割が賃上げの実施を考えていた。また、設備投資では、「実施する(予定含む)」は20.3%、「実施しない(予定含む)」は23.9%、「検討中」は27.0%となった。
 「実施する(予定含む)」と回答した企業を従業員数別にみると、賃上げは「6〜20人」「21〜50人」「51〜100人」で3割を超えた。他方、設備投資では、「21〜50人」「51〜100人」「101〜300人」「301〜1,000人」で2割超となった。
 また、資本金別および政策の認知度別に賃上げや設備投資の実施意向をみると、賃上げは、資本金1億円以下で法人税改革の内容を含めて知っている企業では52.5%が実施する一方、認知度が下がるにつれて、割合が低下していく。資本金1億円以上では、内容まで知っている企業の34.8%が予定している。他方、設備投資では、資本金による差は賃上げと比較して小さく、内容の認知度により実施を予定する企業の割合に、賃上げとの違いが表れた。
 今回の法人税改革における賃上げと設備投資に関して、従業員数や政策内容の認知度により政策への反応が異なっており、企業規模に応じた内容の周知が一段と重要となろう。

3. 法人減税を求める一方、「補助金や助成金の拡充」「税制の簡素化」も上位に

 法人課税制度改革についてどのような政策を求めるか尋ねたところ、「法人実効税率の引き下げ」が48.0%で最も高かった(3つまでの複数回答、以下同)。次いで、「法人税減税」(36.1%)、「補助金や助成金の拡充」(28.2%)、「税制の簡素化」(27.7%)、「設備投資減税」(27.1%)が続いた。
 他方、求める政策には企業規模により異なる項目もみられた。「法人実効税率の引き下げ」や「外形標準課税の見直し」は大企業で高くなった一方、「法人事業税減税」や「法人住民税減税」「法人税減税」「固定資産税の見直し」などは、規模が小さい企業ほど高くなる傾向が表れた。


4 日本経済活性化への寄与、評価が二分される一方、半数近くが判断しきれず

 今回の法人税改革が日本経済の活性化に寄与すると思うか尋ねたところ、「寄与する」が28.6%、「寄与しない」が26.2%と、見方が分かれる結果となった。また、「分からない」が45.3%と半数近くにのぼっており、日本経済全体に与える影響について、判断しきれていない企業が多い様子がうかがえる。
 企業からは、「本当に税収を増やすつもりなら、払っていない人から薄く取る方向に変えないと、財政は持たない」(内航船舶貸渡、大分県)や「今回の法人税改革は大企業に設備投資を促す面では効果があると思うが、中小零細企業にはなかなか波及効果が及ばないのではないか」(土木建築サービス、東京都)、「法人税改革は事業者としては税コスト低減という意味ではメリットがある。しかし、法人税軽減が賃金に還元され、また設備投資に繋がったとしても、多くの消費者は、将来不安を理由に消費拡大に寄与しにくいこと、企業も先を見越した成長投資というよりは省力化投資が主体になるものと思料する」(普通倉庫、東京都)、「中小企業では、人手不足が解決されない限り、改革に向けた対策が実施できない状況」(ソフト受託開発、東京都)などの意見があがった。

まとめ

 国内景気が拡大を続けるなか、賃金の上昇は緩やかなものにとどまっている。こうしたなか、米国では10年間で1.5兆ドルにのぼる大型減税が成立するなど、各国では税制面から企業の競争力向上を支援する政策が打ち出されてきた。日本では、企業の内部留保が増大するなかで、現預金は211兆円に達し、過去最高となった。そのため、中小企業の賃上げや設備投資等を促す2018年度税制改正が注目されている。
 本調査によると、企業の法人税改革に対する認知度は7割超が要旨を知っているが、そのうち内容まで把握している企業は4.9%にとどまっている。また、賃上げや設備投資に対する政策への反応は認知度により大きく異なることが明らかとなった。さらに、賃上げは資本金による違いが顕著に表れた一方、設備投資に大きな違いはみられなかった。
 法人課税制度について、企業は政府に法人減税を求める一方、補助金や助成金の拡充、税制の簡素化などを求める意見も強い。法人税改革が日本経済の活性化に寄与するかどうか、企業の見方は分かれている。政策投入をより効果的なものとするため、政策に対する認知度を高めることが一段と重要となろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,113社、有効回答企業1万168社、回答率44.0%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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