2018年度の賃金動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2018年1月特別企画 -

 

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2018年2月16日
株式会社帝国データバンク

2018年度の従業員給与・賞与、約3.7兆円増加と試算

〜賃金改善、過去最高の56.5%が見込む〜


はじめに

 2017年の景気は「回復局面」とする企業が4年ぶりに2割を超えたうえ、「悪化局面」も1ケタ台に低下し(「2018年の景気見通しに対する企業の意識調査」)、概ね上昇傾向で推移した。また、政府は賃上げを行った企業に対する優遇措置を盛り込んだ税制改革を打ち出すなど、賃金改善の動向がアベノミクスの成否を決定づける重要な要素として注目される。
 このようななか、帝国データバンクは、2018年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2018年1月調査とともに行った。


※調査期間は2018年1月18日〜31日、調査対象は全国2万3,089社で、有効回答企業数は1万161社(回答率44.0%)。なお、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し、今回で13回目。
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。
※賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)することで、定期昇給は含まない。

調査結果(要旨)

  1. 2018年度の賃金改善が「ある」と見込む企業は56.5%と過去最高を更新。前回調査(2017年度見込み、2017年1月実施)を5.3ポイント上回った。「ない」は18.4%にとどまり、2018年度の賃金改善は概ね改善傾向にある。

  2. 賃金改善の具体的内容は、ベア45.4%(前年度比5.1ポイント増)、賞与(一時金)31.8%(同3.0ポイント増)。ベア・賞与(一時金)とも過去最高を更新

  3. 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が8割に迫る79.7%と4年連続で増加。人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっている。「自社の業績拡大」(47.0%)が5年ぶりに増大するなど、上位5項目はいずれも前年を上回った。改善しない理由は、「自社の業績低迷」(55.6%)が4年ぶりに5割台へ低下。「人的投資の増強」(20.2%)は横ばいで推移した一方、「内部留保の増強」(17.9%)は3年連続で増加

  4. 2018年度の総人件費は平均2.84%増加する見込み。そのうち、従業員の給与や賞与は総額で約3.7兆円(平均2.65%)増加すると試算される

1. 2018年度、企業の56.5%が賃金改善を見込む

 2018年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は56.5%と、2年連続で5割を超えた。賃金改善を見込む企業は前回調査(2017年1月)における2017年度見込み(51.2%)を5.3ポイント上回り、過去最高となった。一方、「ない」と回答した企業は18.4%と前回調査(22.5%)を4.1ポイント下回った。「ある」が「ない」を8年連続で上回ると同時に、その差も38.1ポイントと前年より大幅に拡大し、過去最大を更新した。2018年度の賃金動向は概ね改善傾向にある。
 2017年度実績では、賃金改善が「あった」企業は4年連続で6割を超え、景気の拡大が続くなかで、多くの企業で賃金改善を実施していた様子がうかがえる。
 2018年度に賃金改善が「ある」と回答した企業を業界別にみると、『製造』が最も高く、『運輸・倉庫』『建設』が続いた。上位3業界は前年度と変わらなかった。他方、『金融』は調査開始以降13年連続で「ない」が「ある」を上回っており、10業界中唯一、賃金改善を見込む企業の割合が前年度から低下した。
 企業からは、「深刻な人手不足に対応するために、人件費を上げざるを得ない」(一般貨物自動車運送、静岡県)や「人材確保のために賃金上昇および労働環境改善が求められている」(パレット製造、新潟県)など、人手不足にともない人材を定着・確保させるために賃金改善を行うという声が多くあがった。また、「賃金の向上は、働く意欲や生産性向上の意欲に繋がる企業戦略である。その企業戦略から企業の成長に繋げるには、従業員教育+職場環境+コミュニケーションの充実+従業員同士の連携・協力が欠かせない」(土木工事、神奈川県)など、賃上げを消費意欲の高まりに繋げるためには、企業の成長と従業員の収入増加が重要という意見がみられた。他方、賃金改善を行わない企業からは「中小企業にも景気改善の実感が拡大しないと賃上げは難しい。賞与によってトータルとして増やすのが精いっぱい」(建築材料卸売、東京都)などの声も聞かれた。
 賃金改善が「ある」企業の割合を従業員数別にみると、「6〜20人」(60.0%)、「21〜50人」(62.9%)、「51〜100人」(61.5%)が6割を超えた。他方、「5人以下」「301〜1,000人」「1,000人超」では4割台にとどまっており、賃金改善を行う企業は中小企業で高く、小規模企業や大企業で低くなる傾向が表れている。また、すべての従業員区分で賃金改善を行う割合が前年比で増加しており、従業員数にかかわらず賃金改善を実施すると見込まれている。


2. 賃金改善の具体的内容、ベア実施企業が45.4%、賞与(一時金)は31.8%

 2018年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が45.4%となり、「賞与(一時金)」は31.8%となった。前回調査(2017年度見込み)と比べると、ベアが5.1ポイント、賞与が3.0ポイントそれぞれ増加した
 「ベースアップ」は、2017年度見込みの40.3%を上回り、過去最高となった。また、「賞与(一時金)」も初めて3割台となり、過去最高を記録した。

3. 賃金改善理由、「労働力の定着・確保」が8割に迫る

 2018年度の賃金改善が「ある」と回答した企業にその理由を尋ねたところ、最も高かったのは「労働力の定着・確保」の79.7%(複数回答、以下同)となり過去最高を記録した。人手不足は半数超の企業で感じるなど深刻度を増すなか、人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっており、2015年度以降4年連続して前年を上回った。次いで「自社の業績拡大」(47.0%)が5年ぶりに増加したほか、「同業他社の賃金動向」「最低賃金の改定」「物価動向」など、上位5項目はいずれも前年を上回った。
 企業からは、「労働力流出を防止することも大きな理由」(一般貨物自動車運送、神奈川県)や「社員の業績に貢献する一環として賃金改善を考えたい」(建設機械・鉱山機械卸売、群馬県)など、人材の流出防止や業績改善にともなう従業員への還元をあげる意見がみられた。
 他方、賃金改善が「ない」企業にその理由を尋ねたところ、「自社の業績低迷」が55.6%(複数回答、以下同)と前回調査(60.0%)より4.4ポイント減少した。賃金改善を行わない理由として業績低迷をあげる企業は4年ぶりに5割台に低下しており、減少傾向にある。また、「人的投資の増強」や「同業他社の賃金動向」が2割程度の横ばいで推移した一方、景気見通しの先行き不安による資本確保など「内部留保の増強」をあげる企業は3年連続で増加した。賃金改善を行わない企業では、業績低迷を理由とした企業が減少する一方、将来に備えた内部留保を増強する企業が徐々に増加してきた。
 企業からは、「業績低迷とまでは言えないが、アベノミクス効果などは零細企業にはまったく関係なく、賃金改善などできない」(土木工事、千葉県)や「企業業績の先行き不安感」(電気機械製造、大阪府)など、業績改善が不透明ななかでは実施できないとする意見がみられた。他方、「大きな設備投資をしたことにより数年は、減価償却が大きく、賃金改善は難しい」(清涼飲料製造、愛知県)といった、設備投資の実施による資金のやりくりのなかで賃上げを見送る企業もあった。

4 2018年度の従業員給与・賞与は約3.7兆円増加と試算

 2018年度の自社の総人件費は、2017年度と比較してどの程度変動すると見込んでいるか尋ねたところ、2018年度の総人件費は前年度比で平均2.84%増加すると見込まれる。金額では総額約4.8兆円、そのうち従業員への給与や賞与は約3.7兆円(平均2.65%)増加すると試算される 1。「増加」 2と回答した企業は70.3%と7割を超えた一方、「減少」は6.8%にとどまり、総じて企業は人件費が増加すると見込んでいる。また、2017年度と比較して、「増加」が前回調査比3.9ポイント増、「減少」が同1.4ポイント減となり、2018年度の人件費は増大すると予想される。
 業界別にみると、『運輸・倉庫』で「増加」すると回答した企業の割合が最も高かった。また、深刻な人手不足が続いている『建設』で総人件費が平均3.25%増加すると推計されるほか、「飲食店」(4.40%増)や「リース・賃貸」(3.67%増)、「メンテナンス・警備・検査」(3.63%増)などを含む『サービス』(3.23%増)、さらに『運輸・倉庫』(3.07%増)で3%を超えると見込まれる。

1 人件費増加額は「法人企業統計」(財務省)より、帝国データバンク試算
2 「増加」(「減少」)は、「10%以上増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計

まとめ

 2018年の国内景気は、企業部門を中心に拡大傾向で推移すると見込まれる一方、個人消費の動向が一段と重要性を増している。労働市場の需給がひっ迫するなか、雇用・所得の増加が重要となる。こうしたなか、政府が民間企業に賃上げを促す「官製春闘」も5年目を迎え、賃上げに積極的な企業と消極的な企業で優遇措置に差を設ける税制改正案の議論が進められている。
 本調査の結果によると、2018年度は過去最高となる56.5%の企業が賃金改善を実施する見通しとなった。さらに、賃金改善を実施する企業の割合は実施しない企業の割合(18.4%)を38.1ポイント上回っており、2018年度の賃金動向は概ね改善傾向にある。また、改善内容についても「ベースアップ」を考えている企業が45.4%に達し、過去最高となった。その結果、企業の総人件費は平均2.84%上昇すると見込まれ、従業員への給与・賞与は約3.7兆円増加すると試算される。
 また、賃金改善の理由では、「労働力の定着・確保」をあげる企業は8割に迫る79.7%と過去最高を記録、「自社の業績拡大」をあげる企業が5年ぶりに増加するなど、人手不足が長期化するなかで労働力の定着・確保を第一に捉えて実施する傾向が一段と強まった。また、業績に貢献する従業員への還元を進める企業も増えてきた。
 一方で、景気回復のカギを握る個人消費について、「中小企業およびそこで働く従業員にとっては、可処分所得の減少が続いており、それを上回る賃上げがなければ個人消費につながらないだろう」(一般貨物自動車運送、兵庫県)といった見方も増えている。政府は賃上げの基盤となる企業業績が上向く経済環境を整えるとともに、実質可処分所得の増大に向けた政策投入の重要性が一段と高まっているといえよう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,089社、有効回答企業1万161社、回答率44.0%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。
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