保護貿易に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2018年6月特別企画 -

 

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2018年7月12日
株式会社帝国データバンク

企業の56.9%が“自由貿易”を支持

〜 保護貿易主義への対応策の実施・検討は進まず 〜


はじめに

 近年、世界経済の回復を背景に、日本からの輸出は増加傾向で推移しており、経済成長のけん引役となっている。政府は各国・地域との取引拡大に向けて、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの政策を推進している。他方、米中における貿易摩擦の激化など、保護貿易主義の世界的な広がりが懸念される。
 そこで、帝国データバンクは、保護貿易に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2018年6月調査とともに行った。


※調査期間は2018年6月18日〜30日、調査対象は全国2万3,149社で、有効回答企業数は9,694社(回答率41.9%)
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 企業の56.9%が日本全体にとって「自由貿易」が望ましいとする一方、国内産業保護を含む「保護貿易」が望ましいとする企業は9.9%にとどまる。他方、自社の属する業界にとっては「自由貿易」が望ましいが43.0%に低下、「保護貿易」は13.1%に上昇

  2. 保護貿易主義による政策が世界的な広がりをみせた場合、自社の業績に「マイナスの影響」があるは28.7%、「プラスの影響」は2.5%にとどまる。また、「どちらともいえない」は38.5%、「影響はない」は12.7%だった

  3. 現在までに、保護貿易主義の高まりについて対応策を実施している企業は0.5%。「対応を検討中」(4.4%)と合わせても、何らかの対応を実施・検討している企業は4.9%にとどまる

  4. 実施・検討している対応策では、「情報収集・分析の強化」が57.0%でトップ。次いで、「仕入先企業の見直し」(32.0%)、「販売計画の見直し」(28.8%)、「自社の商品やサービスの種類・内容の見直し」(26.9%)、「生産計画の見直し」(20.8%)が続く

  5. 「生産計画の見直し」を行っている企業が主に実施・検討している内容は「国内生産の拡大」が30.6%。「販売計画の見直し」では「国内向け販売の拡大」が46.3%。生産・販売計画の見直しは「国内」の拡大を図る傾向

1. 企業の約6割が日本にとって「自由貿易」が望ましいと認識

 一般論として、(A)自由貿易と(B)保護貿易(国内産業保護)について、どちらの政策がより望ましいと思うか尋ねたところ、日本全体において「自由貿易が望ましい」(「Aが望ましい」「どちらかというとAが望ましい」の合計)と回答した企業は56.9%となった。他方、国内産業保護を含めた「保護貿易が望ましい」(「Bが望ましい」「どちらかというとBが望ましい」の合計)は9.9%と1割を下回った。
 日本全体として「自由貿易が望ましい」と回答した企業を業界別にみると、『卸売』(60.0%)が最も高く、次いで『製造』(59.7%)が続いた。相対的に海外進出の進む業界で自由貿易が望ましいと考えていることが明らかとなった。「保護貿易が望ましい」は『農・林・水産』(13.5%)、『建設』(12.5%)、『小売』(10.5%)が1割超と内需型産業で高くなったものの、いずれの業界も自由貿易が保護貿易を上回った。
 一方、自社の属する業界について尋ねたところ、「自由貿易が望ましい」と回答した企業は43.0%で半数未満となった。また、「保護貿易が望ましい」は13.1%と1割を超えた。
 業界別では、自社業界において「自由貿易が望ましい」と考える企業は『卸売』(49.9%)、『製造』(47.8%)、『小売』(44.1%)が高かった。他方、「保護貿易が望ましい」は『農・林・水産』(46.2%)が突出して高く、10業界で唯一、保護貿易が自由貿易を上回った。
 企業からは、「自由貿易を維持しなければ日本経済は成り立たない」(冷凍調理食品製造、神奈川県)や「自由貿易により打撃を受ける産業もあるが、少子高齢化と人口減少が進む国内事情を考えれば必要」(自動車(新車)小売、栃木県)といった、日本の経済・社会構造において自由貿易が必要という意見が聞かれた。他方、「まず国内産業を保護し、力を付けて自由貿易に耐えられるまでになった時、実施すれば良い」(輸送用機械器具卸売、奈良県)や「基本的には自由に貿易できることは重要なことと考えるが、自然環境への影響、その国・民族の文化・歴史を互いに尊重する関係がなければならない」(森林組合、茨城県)といった声もあがった。

 

 

2. 保護貿易主義の広がり、すべての業界で自社業績に「マイナス」が「プラス」を上回る

 保護貿易主義による政策が世界的な広がりをみせた場合、自社の業績にどのような影響を及ぼすか尋ねたところ 1、「マイナスの影響」があると回答した企業は28.7%となった。逆に「プラスの影響」がある企業は2.5%にとどまった。また、「どちらともいえない」は38.5%、「影響はない」は12.7%だった。
業界別にみると、『農・林・水産』で「プラスの影響」(13.5%)が1割を超えたものの、すべての業界で「マイナスの影響」が「プラスの影響」を上回った。
「プラスの影響」がある企業からは、「工場などの国内回帰が始まれば、それがGDPを押し上げることで、内需型の経済成長が期待できる」(建設、熊本県)や「業界の活性化に向かう可能性が高いため」(医薬品製剤製造、東京都)、「輸入品の代替調達として国内生産量が上昇すると見込まれる」(印刷、東京都)といった意見がみられた。他方、「マイナスの影響」と回答した企業からは、「国内市場が縮小するなか、海外市場への活路(輸出でも現地生産でも)しかない」(化学品製造、福島県)や「半導体サプライチェーンの商流が滞った場合、マイナスの影響が生じうる」(化学機械・同装置製造、新潟県)、「世界中の荷動きが悪くなると外航船の需要が減り造船業に影響が出る」(沿海貨物海運、長崎県)などの声が聞かれた。

 


1 日本が現状の政策を継続するなかで、保護貿易主義による政策が世界的な広がりをみせた場合を想定して、自社業績にどのような影響があるか質問した。

3. 保護貿易主義の高まりへの対応策、「実施」「検討」している企業は4.9%にとどまる

 現在までに、保護貿易主義の高まりについて対応策を実施しているか尋ねたところ、「対応している」と回答した企業は0.5%となり、「対応を検討中」(4.4%)と合わせても何らかの対応を進めている企業は4.9%にとどまった。さらに、「対応する予定はない」が59.7%にのぼったほか、「分からない」(35.5%)とする企業も3社に1社となった。
 また、保護貿易主義による政策が広がりをみせた場合、自社の業績に「マイナスの影響」があると回答した企業において、「対応している」企業は0.9%となり、「対応を検討中」(9.5%)と合わせても10.4%にとどまった。自社業績にマイナスの影響を想定しつつも、現時点で対応策を進めている企業は少数であった。他方、自社業績に「プラスの影響」とする企業では、「対応している」(0.8%)と「対応を検討中」(10.5%)の合計で11.3%が何らかの対応策を進めていた。

 

 

4. 対応策、「情報収集・分析の強化」が57.0%でトップ、小規模企業は他社との連携を強化

 保護貿易主義の高まりについて対応策を実施している企業に具体的内容を尋ねたところ、「情報収集・分析の強化」が57.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「仕入先企業の見直し」(32.0%)、「販売計画の見直し」(28.8%)、「自社の商品やサービスの種類・内容の見直し」(26.9%)、「生産計画の見直し」(20.8%)が続いた。
 規模別にみると、「同業他社との連携強化」「異業種との連携強化」について、小規模企業ほど業種にこだわらず他社との連携強化に取り組んでいる様子がうかがえる。また、「販売先企業の見直し」「仕入計画の見直し」を実施している企業は、中小企業が大企業を6ポイント程度上回った。

5. 生産・販売計画の見直し、「国内」の拡大を図る

 保護貿易政策の広がりへの対応策として「生産計画の見直し」を回答した企業に主にどのような内容を実施・検討しているか尋ねたところ、「国内生産の拡大」が30.6%で最も高かった。とりわけ、「小規模企業」では40.9%にのぼり、「大企業」(20.0%)を20.9ポイント上回った。他方、「現地生産の拡大」は20.4%となった。海外における生産を強化する傾向は「大企業」ほど高く、生産計画の見直し内容は企業規模の違いによる差が如実に表れる結果となった。
 「販売計画の見直し」を回答した企業では「国内向け販売の拡大」が46.3%にのぼり、突出して高かった。特に、「中小企業」は半数を超えており、保護貿易の拡大に対する販売面での対応策として国内を重視する傾向が表れた。他方、「大企業」は「計画内容は未定」(42.3%)が4割超となり、販売面での対応について具体化されていない様子がうかがえる。

 

 

まとめ

 世界中で保護貿易が急速に広がりをみせている。米国と中国における関税引き上げなどを通じて、国際貿易を縮小させる懸念が高まってきた。
 こうしたなか、本調査では、企業の約6割が日本にとって“自由貿易”が望ましいと考えていることが明らかとなった。また、自社の属する業界を考慮した場合でも、“自由貿易”を支持する意見が目立った。ただし、農林水産業においては、半数近くの企業が貿易政策について、国内産業保護を含む“保護貿易”が望ましいという結果となった。
 さらに、保護貿易主義による政策が世界的な広がりをみせた場合、企業の28.7%が自社の業績に「マイナスの影響」があると考えていた一方、「プラスの影響」は2.5%にとどまった。しかしながら、保護貿易の高まりへの対応策を実施または検討している企業は5%に満たない。とりわけ、「マイナスの影響」を考えている企業においても6割近くが「対応する予定はない」としており、現時点では対応している企業は非常に少数であった。
 また、対応内容では「情報収集・分析の強化」が半数超を占めていた。さらに、生産計画や販売計画については、国内での生産や販売を拡大するという傾向もみられる。
 日本は自由貿易によって多くの恩恵を受けてきたことは論を待たないが、業界や地域によっては一時的に保護貿易が及ぼすマイナスの影響が表れる可能性もあり、きめ細かな支援策などが必要とされる。こうした状況下にあるなかで、日本経済にとって自由貿易を堅持することが極めて重要であろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,149社、有効回答企業9,694社、回答率41.9%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
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