最低賃金改定に関する企業の意識調査(2018年)

- TDB景気動向調査2018年9月特別企画 -

 

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2018年10月15日
株式会社帝国データバンク

採用時の最低時給は975円、最低賃金を101円上回る

〜 企業の8割で賃上げ実施に加え、4割超で給与体系見直し 〜


はじめに

 2018年10月1日〜中旬にかけて、最低賃金が改定される。2018年度の最低賃金の改定は、政府が「未来投資戦略2018」(成長戦略)や「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)などで、年率3%を目途として、全国加重平均1,000円を目指すなかで、最低賃金が時給で決まるようになった2002年度以降で最高額の引き上げ額となった。そのため、収入増加による消費活性化などが期待される一方で、人件費上昇による企業収益の悪化などが懸念されている 1
 そこで、帝国データバンクは、最低賃金の引き上げに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2018年9月調査とともに行った。なお、最低賃金改定に関する調査は、2007年10月調査、2016年9月調査に続き3回目。

※調査期間は2018年9月13日〜9月30日、調査対象は全国2万3,101社で、有効回答企業数は9,746社(回答率42.2%)。

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com)に掲載している

調査結果(要旨)

  1. 最低賃金の改定を受けて自社の給与体系を「見直した(検討している)」企業は44.0%。「見直していない(検討していない)」は40.0%。2016年9月時点と比較して、「見直した」企業の割合は9.0ポイント増と、最低賃金改定が従来よりも給与体系を見直すきっかけとなっている

  2. 採用時で最も低い時給は約975円で最低賃金の全体平均874円より101円高い。業界別では『サービス』『建設』『不動産』、都道府県別では「東京都」「神奈川県」「大阪府」が1,000円台
  3. 今回の最低賃金の引き上げ額について、「妥当」が43.8%で最も多い。「低い」(15.2%)および「高い」(13.7%)を大きく上回る。ただし、消費回復への効果については、「ない」とする企業が54.6%で半数を超え、「ある」と考える企業は9.0%にとどまる

  4. 企業の83.1%で2018年度の賃上げを実施。賃上げを行っていない企業は12.0%にとどまる。内容は「定期昇給」が62.2%で最も多く、「賞与(一時金)」(36.4%)や「ベースアップ」(33.4%)は3社に1社で実施

1 最低賃金制度とは、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度。改定後の最低賃金は全国平均で2017年度より26円引き上げられ874円に、地域別では都道府県ごとに24〜27円引き上げられ時給761〜985円となる(産業別最低賃金等は別途定められる)。

1. 企業の44.0%が最低賃金改定を受けて給与体系「見直し」

 最低賃金の改定を受けて、自社の給与体系に関する見直しの有無を尋ねたところ、「見直した(検討している)」企業が44.0%となり、「見直していない(検討していない)」の40.0%を4.0ポイント上回った 2。企業の4割超で最低賃金改定にともない給与体系を見直しており、最低賃金の改定が時給表示された2002年以降で最大の上げ幅となった影響が如実に表れる結果となった。前回調査(2016年9月調査)と比較すると、約半数にのぼっていた「見直していない(検討していない)」企業が大幅に減少した一方、「見直した(検討している)」が9.0ポイント増加している。最低賃金が従来よりも給与体系を見直すきっかけとなっていることが浮き彫りとなった。
 給与体系を見直した理由について、企業からは「収益が以前より改善してきているので、社員に還元することを考えているほか、人材獲得・維持のためにも必要」(防水工事、北海道)や「人材募集をしても低賃金だと応募がない」(ガソリンスタンド、熊本県)、「最低賃金の引き上げに加え、消費税率引き上げが直近にあるうえ、社会保険料の見直しが控えているなか、社内においてはできる限り労に報いたい」(広告代理、大阪府)、「パートタイマー等の時給待遇者には同程度の引き上げを実施した。また、月給者については冬季賞与で加算する」(生鮮魚介卸売、宮城県)といった声があがっており、最低賃金のみならず、人手不足のなかで人材の獲得・維持や将来の租税・社会保険の負担増を見据えて給与体系を見直している様子がうかがえる。
 一方、見直していない企業からは、「従前より従業員の給与を最低賃金で設定していないため、いま見直す必要はないと考えている」(食料・飲料卸売、東京都)や「給与は毎年見直しをしているが、最低賃金の見直しが理由ではない」(化学肥料製造、富山県)、「最低賃金を下回る従業員がいないため」(百貨店、山形県)などの意見がみられた。

 

2 給与体系の見直しについて、正社員、非正社員(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など)の雇用形態は問わず、回答を求めた。



2. 従業員採用時の最も低い時給は平均975円、最低賃金を101円上回る

 従業員を採用するときの最も低い時給を尋ねたところ、全体平均は約975円となり、改定後の最低賃金の全体平均874円を101円上回る金額となった 3
 業界別にみると、情報サービスが1,100円台となるなど『サービス』が約1,016円で最も高く、『建設』『不動産』で1,000円を上回った。他方、『農・林・水産』や『小売』で低かった。
 都道府県別で比較すると、最も採用時の最低時給が高かったのは「東京都」で約1,071円となった。以下、「神奈川県」(同1,048円)、「大阪府」(同1,010円)と続き、いずれも1,000円台となった。他方、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最大だったのは「大分県」で、差額は+203円(採用時の最低時給約965円)となった。以下、「愛媛県」「長崎県」「佐賀県」「青森県」が続き、西日本を中心に最低賃金と採用時の最低時給の差額が大きくなっている。
 制度として定められている最低賃金と、採用時の最も低い時給の実態との間で乖離がみられ、業界間・地域間の格差が顕著に表れる結果となった。

3 従業員を採用するときの最も低い時給として、次の条件で回答を求めた。(1)正社員、非正社員(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など)の雇用形態は問わない、(2)日給、週給、月給などの場合は時給に換算する。

3. 引き上げ額、「妥当」と考える企業が43.8%で最多

 今回の最低賃金の引き上げ額は、労働者やその家族が最低限度の生活を維持していくうえで、妥当と思うか尋ねたところ、「妥当」と回答した企業が43.8%にのぼり、「低い」(15.2%)を28.6ポイント上回った。また、「高い」は13.7%にとどまっており、人件費の増加要因となる改定にもかかわらず、今回の最低賃金の引き上げ額は総じて受け入れられている様子がうかがえる。

 

4. 消費回復への効果、半数を超える企業で懐疑的

 今回の最低賃金の引き上げは、今後の消費回復に効果があるか尋ねたところ、「ある」と回答した企業は9.0%だった。一方、「ない」は54.6%と半数を超えており、最低賃金の引き上げが、消費の回復に結び付くか懐疑的に考えている企業が多数を占める結果となった。
 企業からは、「最低賃金の引き上げはまだまだ足りておらず、消費を喚起するには不十分」(金属表面処理、神奈川県)や「最低賃金の引き上げにより消費が拡大するとは思えない。消費税が10%に上がることによる消費の冷え込みの方が影響は大きいのではないか」(ニット等染色整理、福井県)、「労働者の条件を細かく変えても景気回復にはつながりにくい。国民が将来の不安がなくなり、安心して消費生活ができるようにすることが先決」(普通倉庫、大阪府)などの声が聞かれた。他方、消費回復への効果が「ある」とする企業からは、「適正な労務費支払と労務管理により、消費にも好影響を与えるのではないか」(ゴムベルト製造、兵庫県)といった意見があがった。また、「史上最高に積みあがった企業の内部留保を、国内での設備投資、下請け単価の引き上げ、従業員給与の改善に活用することで、消費の拡大による経済の好循環をはかるべき」(鉄鋼卸売、千葉県)など、経済の好循環を図ることを指摘する声も聞かれた。

 

5. 2018年度、企業の8割超で賃上げを実施

 2018年度の一人当たり賃金引き上げの実施状況について尋ねたところ、「定期昇給」で賃上げした企業が62.2%と最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「賞与(一時金)」(36.4%)、「ベースアップ」(33.4%)が続き、3社に1社がボーナスやベアにより賃上げを実施していた。また、「各種手当の増額・新設」が11.1%、創立記念日等の祝金や通勤定期等の現物支給などを含む「その他の賃金の増額」が2.7%となり、何らかの形で賃金の引き上げを実施した企業は83.1%にのぼった。他方、「賃金の引き上げは行っていない」(12.0%)は1割程度にとどまった。

 

まとめ

 2018年度の最低賃金改定は10月1日から中旬にかけて全国で実施されるが、今年度の引き上げ額は比較可能な2002年度以降で最大となった。また、個人消費の伸び悩みが続くなかで、賃金の上昇は消費改善の基盤となることが期待される。
 本調査によると、今回の改定を受けて4割を超える企業が給与体系の見直しを実施(検討含む)していた。この結果は、同様の調査を実施した2016年9月と比べて大幅に増加しており、最低賃金の引き上げが企業の給与体系に大きく影響したことがうかがえる。
 他方、従業員を採用する際の最低時給は、最低賃金より概ね101円上回っている。最低賃金の地域間格差は幾分縮小したとされるものの、実際の採用時の賃金には依然として乖離が生じていることが明らかとなった。また、業界別では、情報サービスを含む『サービス』が最も高かったほか、人手不足が顕著な『建設』などの時給が高くなっていた。
 人件費の上昇などコスト負担の高まりに直面するなかで、企業の8割超が2018年度に賃上げを実施しており、引き上げ額を妥当と捉えている企業も多い。しかし、最低賃金改定による消費回復を懐疑的にみている企業は多く、消費活性化への効果は慎重に検証する必要があろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,101社、有効回答企業9,746社、回答率42.2%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


内容に関する問い合わせ先
株式会社帝国データバンク データソリューション企画部 産業データ分析課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。
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