TPP11に関する企業の意識調査(2018年12月)

- TDB景気動向調査2018年12月特別企画 -

 

PDF形式のファイルをご覧いただくには、
下記リンク先からダウンロードしてください。

プレスリリースをダウンロード

プレスリリースをダウンロード
2019年1月21日
株式会社帝国データバンク

TPP11、企業の53.4%が「日本に必要」

〜 自社にプラス影響は「飲食店」、マイナス影響は「農・林・水産」がトップ 〜


はじめに

 2018年12月30日、TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定:CPTPP)が発効した。TPP11における包括的通商ルールは、政府が進める他の通商交渉だけでなく、海外取引を行っていない企業にも影響を及ぼすとみられ、TPP11の動向が注目されている。他方、TPPから離脱した米国は二国間での通商交渉を要求しており、2019年1月からは日米物品貿易協定(TAG)の交渉が始まる予定である。
  帝国データバンクはTPP11に関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2018年12月調査とともに行った。なお、TPPおよびTPP11に関する調査は2010年12月、2015年12月、2017年6月に続き4回目。


※調査期間は2018年12月14日〜2019年1月7日、調査対象は全国2万3,059社で、有効回答企業数は9,619社(回答率41.7%)
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com)に掲載している

調査結果(要旨)

  1. TPP11、企業の53.4%が日本にとって「必要だと思う」と回答。「必要だとは思わない」(9.7%)を43.7ポイント上回った。自社の属する業界では24.9%が「必要」と考えているものの、企業の見解は二分。11カ国での閣僚会合後の前回調査(2017年6月)と比べると必要性を肯定する企業が緩やかに増加している
  2. 自社への影響は「プラスの影響がある」(12.1%)が「マイナスの影響がある」(4.7%)を上回った。「影響はない」が37.6%、「分からない」が45.5%。業種別では、プラス影響は「飲食店」(32.6%)、マイナス影響は「農・林・水産」(46.3%)がトップ
  3. 具体的内容、影響を想定する企業のうちプラス面では「原材料コストの低下」(39.0%)がトップ。以下、「売り上げや利益の増加」(34.1%)、「輸出の増加」(33.6%)が3割台で続く。マイナス面では「販売価格の低下」(27.7%)がトップ。以下、「新規参入の増加による競争の激化」(24.4%)、「売り上げや利益の減少」(16.4%)が続く
  4. 期待する通商交渉、「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」が32.8%でトップ。以下、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」(29.6%)、「日中韓自由貿易協定(日中韓FTA)」(16.7%)が続く。「日米物品貿易協定(TAG)」は14.3%

1. 企業の53.4%で日本にとってTPP11が必要と認識も、自社業界では24.9%にとどまる

 TPP11 1は「日本」にとって必要だと思うか尋ねたところ、「必要だと思う」と回答した企業は53.4%と半数を超え、「必要だとは思わない」(9.7%)を43.7ポイント上回った。米国がTPPから離脱し、11カ国での閣僚会合が開催された時期に実施した前回調査(2017年6月調査)と比較すると、「必要だと思う」は1.7ポイント増加した一方、「必要だとは思わない」は2.3ポイント減少した。日本全体でみると、TPP11の必要性を認識する企業が緩やかに増加している様子がうかがえる。
 他方、TPP11が「自社の属する業界」にとって必要だと思うか尋ねたところ、「必要だと思う」と回答した企業は24.9%となり、「必要だとは思わない」(28.9%)を4.0ポイント下回った。また、「分からない」(46.2%)は半数近くに達した。前回調査と比較すると、「必要だと思う」が2.4ポイント増加した一方、「必要だとは思わない」は3.7ポイント減少した。自社の属する業界に対して、依然として必要性を捉えかねている企業も多いものの、見解は二分している。
 TPP11の必要性について海外取引の有無別にみると、日本全体では輸出・輸入の両方を行っている企業で必要と考えている企業が多いものの、海外取引を行っていない企業でも半数超が必要性を認識していた。他方、自社の業界については、海外取引を行っている企業で必要とする割合が高く、とりわけ輸出企業でその傾向が表れていた。


1 TPP11(Trans Pacific Partnership 11)
 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に合意した12カ国から米国を除いた11カ国による交渉のこと。オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポールおよびベトナムから構成される。TPP11は、自由貿易協定(FTA)の基本的な構成要素である物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易のみではなく、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達等)のルールのほか、新しい分野(環境、労働、分野横断的事項等)を含む包括的協定となっている。現在、日本を含む7カ国が国内手続きを完了しており、2018年12月30日に協定が発効した。

2. 「農・林・水産」は企業の46.3%が自社にマイナスも、「飲食店」は3割超がプラス見込む

 現時点において、TPP11が自社にどのような影響を与えるか尋ねたところ、「プラスの影響がある」と回答した企業は12.1%となった。「マイナスの影響がある」は4.7%にとどまったものの、「分からない」が4割を超えている。また、「影響はない」は37.6%だった。前回調査と比較すると、「プラス」「マイナス」ともわずかに減少した。一方、「分からない」が2.8ポイント増加した。
 TPP11が自社に「プラスの影響がある」とした企業を業種別にみると、「飲食店」が32.6%で3割超となった。以下、「旅館・ホテル」「家具類小売」「飲食料品・飼料製造」「飲食料品卸売」「人材派遣・紹介」などが続いた。発効したTPP11の内容を踏まえて、食品関連を中心に仕入価格の低下や訪日観光客の増加、人材移動などが期待される業種が上位にあがった。また、関税引き下げなどが期待される製造関連では、「飲食料品・飼料製造」や「精密機械、医療機械・器具製造」のほか、「機械製造」「輸送用機械・器具製造」がトップ10に入った。
 企業からは、「輸出入貨物の増加による荷量の増加」(港湾運送、東京都)や「アジア地域の所得が増加すれば、海外旅行など観光にはプラスになる。また、海外からの就労ビザのルールが確立されれば、労働力の確保にもつながる」(娯楽サービス、福岡県)、「労働力の補充が望めるのであれば、人手不足の業界にとってはプラスになる」(建設、埼玉県)、「輸出産業の売り上げや利益の拡大が、賃上げや内需をもたらす」(専門サービス、東京都)といった声があがった。
 他方、TPP11が自社に「マイナスの影響がある」とする企業では、「農・林・水産」が46.3%と突出して高かった。次いで、「飲食料品卸売」「飲食料品・飼料製造」「電気通信」「飲食料品小売」などが続いた。
 企業からは、「農水産物の輸入増にともない、卸売市場での取扱量の減少が想定される」(冷蔵倉庫、北海道)や「輸入農作物の増加が見込まれるほか、農業規模の拡大や農地の集約化が求められる」(農業用機械器具卸売、埼玉県)、「著作権の期間が延長されることにより、若干コストが増加する」(出版、東京都)などの意見が聞かれた。

 

3. 具体的影響、プラス面「原材料コストの低下」、マイナス面「販売価格の低下」がトップ

 TPP11が自社に「プラスの影響がある」または「マイナスの影響がある」と回答した企業に対して具体的にどのような影響が想定されるか尋ねたところ、プラス面としては、「原材料コストの低下」が39.0%で最も高く、「売り上げや利益の増加」「輸出の増加」とともに3割台となった。以下、「調達ルートの拡大」が2割台、「海外企業との連携の拡大」などが続いた。
 他方、マイナス面では、「販売価格の低下」が27.7%でトップだったほか、「新規参入の増加による競争の激化」が2割台で続いた。次いで、「売り上げや利益の減少」「新たなルールに対応する組織・商習慣の変更」「海外市場での海外企業との競争の激化」が高かった。
 企業からは、「早く市場開放し、国際競争力をつけるべき」(各種商品卸売、神奈川県)や「各国が関税を撤廃して貿易が盛んになると景気上昇につながり、お互いに経済成長が期待できる」(精密機械器具卸売、大阪府)、「世界的な貿易の自由化は経済を活性化させる」(自動車(新車)小売、沖縄県)などの声があがった。他方、「国内産農産物へのダメージが大きく、食品の安心・安全にも不安がある」(農業協同組合、北海道)や「他国のゼネコンの日本への進出により、値引き競争に不安を感じる」(内装工事、埼玉県)、「国民に協定を締結したらどうなるのか、しっかりと理解できるように事前の説明をするべき」(畜産サービス、北海道)といった意見もみられた。
 参加国の関税引き下げによる原材料価格の低下や輸出増加など、輸出・輸入両面でのプラス要素があがっているほか、ルールの統一化などを通じて海外企業との連携がし易くなることに期待する企業も多くみられた。他方、販売価格の低下や新規参入の増加など競争環境の厳しさが増すことのほか、組織や商習慣の変更をともなう変化など、マイナス面への影響を懸念している様子もうかがえる。



4. 企業の32.8%が「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」への通商交渉に期待

 現在、日本が交渉あるいは検討等を行っている経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)について、どの通商交渉を期待しているか尋ねたところ、「東アジア地域包括的経済連携 2(RCEP)」が32.8%でトップとなった。次いで、「アジア太平洋自由貿易圏 3(FTAAP)」(29.6%)が続き、アジアおよび環太平洋地域における経済圏の構築を求める通商交渉が上位にあげられた。また、「日米物品貿易協定(TAG)」は14.3%だった。
企業からは、「最終的には米国の影響を受ける形になるので、日米の貿易協定を少しでも日本の意向をくむ形にしたうえで、多国間の自由貿易に拡大されることを期待したい」(家庭用電気機械器具卸売、東京都)や「モンゴルをはじめとした中央アジア諸国との経済連携や自由貿易を促進すべき」(広告、京都府)、「TPP11やTAGなどについては、保守的なスタンスで対応すべき」(信用協同組合・同連合会、秋田県)といった意見があがった。


2 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、ASEAN10カ国+6カ国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)が交渉に参加する広域経済連携
3 アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)は、TPP11および米国とRCEP16カ国の双方を包括する広範囲の自由貿易圏

まとめ

 2018年12月30日のTPP11の発効に続いて、2019年は1月に日米物品貿易協定(TAG)交渉が開始されるほか、2月には日EU・EPAおよびSPA(戦略的パートナーシップ協定)が発効となる。また、2018年11月のRCEP首脳会議では、2019年に早期妥結することを盛り込んだ共同首脳声明が採択されるなど、今年は通商関係のイベントが相次ぐ予定となっている。
 こうしたなか、TPP11に対して企業の半数超が日本に必要だと考えている一方、自社業界への必要性については2割台にとどまる。また、その効果では業種により大きく異なっており、とりわけ、農林水産業で自社への影響を懸念する企業が突出して多い。
  TPP11は今後の日本経済にとって、生産性向上に向けた重要な経済連携になるとみられる。しかし、業種により直接的な不利益を受ける企業も想定される。政府は、企業が感じる懸念を捉えながら、自由貿易を維持・拡大することが肝要となろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,059社、有効回答企業9,619社、回答率41.7%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


内容に関する問い合わせ先
株式会社帝国データバンク データソリューション企画部 産業データ分析課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。
リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。

当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。
当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。

プレスリリースをダウンロード   会員募集中

このページのトップへ

このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.