M&Aに対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2019年6月特別企画 -

 

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2019年7月25日
株式会社帝国データバンク

企業の35.9%がM&Aの「可能性あり」

〜 買い手は「金額の折り合い」、売り手は「従業員の処遇」を最も重視 〜


はじめに

 日本経済が持続的に成長するためには、企業がこれまでに培ってきた技術やノウハウ、貴重な人材や設備などを次世代に引き継ぐことが喫緊の課題といわれている。こうしたなか、政府や行政などの支援も後押しとなり、中小企業における事業承継などの課題解決の手段の1つとして、M&A 1が注目されている。
 そこで、帝国データバンクは、M&Aに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年6月調査とともに行った。


※調査期間は2019年6月17日〜30日、調査対象は全国2万3,632社で、有効回答企業数は9,977社(回答率42.2%)。

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 近い将来(今後5年以内)、『M&Aに関わる可能性がある』企業は35.9%となった。その内訳は、「買い手となる可能性がある」が22.2%、「売り手となる可能性がある」が7.9%、「買い手・売り手両者の可能性がある」が5.8%であった。また、「近い将来においてM&Aに関わる可能性はない」が39.0%、「分からない」が25.1%となった
  2. 買い手企業として相手企業に対し重視することは、「金額の折り合い」が76.8%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「財務状況」(70.3%)、「事業の成長性」(67.4%)、「従業員の処遇」(54.6%)、「技術やノウハウの活用・発展」(54.3%)と続く
  3. 売り手企業として相手企業に対し重視することは、「従業員の処遇」が78.3%でトップ(複数回答、以下同)。次いで、「金額の折り合い」(72.7%)、「経営陣の意向」(50.4%)、「人事労務管理や賃金制度」(35.9%)、「財務状況」(32.6%)が上位となった
  4. M&Aに対する必要性について、今後、社会の大きな変化や経営者の高齢化が進むなかで、半数以上の企業で「M&Aの必要性は高くなる」(51.5%)と回答した。また、必要性は「変わらない」が21.7%となり、「M&Aの必要性は低くなる」が1.7%であった

1 M&Aとは、企業の買収や合併、一部株式を売買して資本提携することなどの企業戦略全般を指す。また、人材難などにより後継者がいない場合の事業承継の手段や事業の一部を譲渡することなども含められる。なお、資本の移動を伴わない業務提携(共同研究、開発など)は含まない。

1. 今後5年以内に『M&Aに関わる可能性がある』企業は35.9%

 近い将来(今後5年以内)における自社のM&Aへの関わり方について尋ねたところ、『M&Aに関わる可能性がある』(「買い手となる可能性がある」「売り手となる可能性がある」「買い手・売り手両者の可能性がある」の合計 2 3)企業は35.9%となった。また、「近い将来においてM&Aに関わる可能性はない」が39.0%、「分からない」が25.1%となった。企業の3社に1社が何らかの形でM&Aに関わる可能性がある一方、M&Aに関わる可能性がない企業も4割近くにのぼった。
  『M&Aに関わる可能性がある』企業を業界別にみると、『小売』が42.7%でトップとなった。次いで『金融』(42.0%)、『サービス』(41.2%)、『運輸・倉庫』(40.4%)が4割台で続いた。他方で、『農・林・水産』(16.7%)は唯一1割台となっており、他の業界と比較するとM&Aに関わる可能性が極めて低い結果となった。
  従業員数別にみると、従業員数が多くなるにつれてM&Aに関わる可能性は高くなる傾向が表れた。とりわけ「1,000人超」(56.3%)では半数を超え、「5人以下」(30.1%)と比較すると26.2ポイント上回っていた。
  「M&Aの買い手となる可能性がある」企業からは、「将来を見据えた企業規模の拡大、事業戦略としてM&Aは必要と考えている」(建設機械器具賃貸、埼玉県)や「初期投資を考えるとM&Aの方が投資効率は高い」(旅館、愛知県)といった声が聞かれた。一方、「M&Aの売り手となる可能性がある」企業からは、「事業承継のためにM&Aを考える時期は近いと思う」(乾物卸売、千葉県)や「当社を買収したいと思わせるように、魅力的な会社に成長させている」(ソフト受託開発、東京都)などの意見があげられた。
  他方、「近い将来においてM&Aに関わる可能性はない」企業からは、「後継者が育っているので、弊社には不必要」(製紙機械・パルプ装置製造、大阪府)や「現状は考えていないが、条件が合致すれば、買い手として考えてみても良い」(包装用品卸売、埼玉県)などの意見が聞かれた。既に後継者や事業承継の道筋が立っている企業からは、そもそもM&Aを検討していないという声もあがった一方、条件などが合致すれば検討するなど前向きな企業もみられた。

 


2 「買い手(売り手)となる可能性がある」は、〈M&Aの「買い手」(「売り手」)となる可能性がある(企業の買収や合併など)〉と〈M&Aの「買い手」(「売り手」)となる可能性がある(一部事業の譲受や資本提携など)〉のいずれかを回答し、かつ「買い手」と「売り手」が重複しない企業
3 「買い手・売り手両者の可能性がある」は、「買い手」および「売り手」のいずれも可能性があると回答した企業

2. M&Aを進める上で、買い手は「金額の折り合い」、売り手は「従業員の処遇」を最も重視

 「買い手となる可能性がある」または「買い手・売り手両者の可能性がある」企業に対して、買い手として相手企業にM&Aを進める上でどのようなことを重視するか尋ねたところ、「金額の折り合い」が76.8%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「財務状況」(70.3%)、「事業の成長性」(67.4%)、雇用維持などの「従業員の処遇」(54.6%)、「技術やノウハウの活用・発展」(54.3%)が続いた。
 他方、「売り手となる可能性がある」または「買い手・売り手両者の可能性がある」企業では、「従業員の処遇」が78.3%でトップとなり、「買い手」の同選択肢を23.7ポイント上回った。企業からも「従業員などの生活基盤が大きく崩れないよう配慮する必要がある」(鉄鋼卸売、東京都)や「今後、廃業かM&Aかの選択を迫られれば、従業員の事を考えるとM&Aを選ばざるを得ない」(油圧・空圧機器製造、京都府)などの声が聞かれ、従来から雇用している従業員の今後を第一に考えている様子がうかがえた。次いで、「金額の折り合い」(72.7%)、「経営陣の意向」(50.4%)、「人事労務管理や賃金制度」(35.9%)、「財務状況」(32.6%)が上位にあげられた。



「金額の折り合い」は「買い手」「売り手」企業ともに7割を超えており、売買金額を重視する割合は非常に高い。また、雇用維持などの「従業員の処遇」では「売り手」企業が「買い手」企業を、「財務状況」「事業の成長性」などでは「買い手」企業が「売り手」企業を大きく上回っていた。立場によりM&Aを進める上での重要事項に大きな差異があることが浮き彫りとなった。

3. 企業の51.5%が今後「M&Aの必要性は高まる」と認識

 2019年版中小企業白書では、社会の大きな変化や経営者の高齢化が進むなかで、「経営者の世代交代」「経営資源の引継ぎ」「構造変化への対応」が重要な課題として指摘されている。そこで、これらの課題に関して、今後のM&Aの必要性について尋ねたところ、企業の51.5%が今後「M&Aの必要性は高くなる」と認識していた。また、必要性は「変わらない」が21.7%、「M&Aの必要性は低くなる」が1.7%であった。半数を超える企業でM&Aの必要性が高まると考えている一方で、「自社の役員・従業員、全員で対応をする予定」(医薬品小売、岡山県)という意見も聞かれた。
 「M&Aの必要性は高くなる」と認識している企業からは、「後継者が不在である場合の事業承継の有効な手段になり得る」(医療用機械器具卸売、山形県)や「優良な技術を持つ企業がM&Aによって残っていくことができれば良い」(冷暖房設備工事、東京都)といった意見があがった。他方、「信頼のおけるM&A会社に仲介を依頼したいが、なかなか見当たらない」(冷暖房設備工事、北海道)や「M&A仲介業者の手数料が高すぎる。買い手として依頼出来ない」(鉄骨工事、静岡県)などといった意見もあった。企業がM&Aを進める上で仲介業者との関係に頭を悩ませている様子もうかがえた。また、「会員制の紹介プラットフォームがあれば誰もが利用できるのではないか」(再生資源卸売、滋賀県)という指摘にあるように、M&Aの紹介サイトやマッチングサイトなどのWebサービスを期待する声もあがった。

まとめ

 本調査結果から、企業の35.9%が近い将来(今後5年以内)に何らかの形で『M&Aに関わる可能性がある』と考えていることが明らかとなった。特に小規模企業からは「後継者の問題、技術の伝承などからみてもM&Aをもっと大いに取り上げ、国全体の問題として取り組んでほしい」(鉄鋼卸売、福岡県)といった声もあるように、事業承継問題の解決や貴重な経営資源の散逸を防ぐ手段としてM&Aに期待感を持っている様子が明らかになった。また、「後継者不足による廃業・営業縮小の企業を買収し、事業拡大を模索中」(飲食料品卸売、東京都)など、既にM&Aを検討し、業容拡大を目指している企業も多い。
 M&Aを進める上で相手企業に対し重視することは、両者の立場によって重視する項目に大きな違いがみられ、「買い手」企業においては相手企業の財務状況や成長性を重視する一方で、「売り手」企業においては既存の従業員の処遇に重きを置いていた。また、売買金額についての関心は高く、「買い手」「売り手」企業を問わず7割を超えている。
 他方、今後、社会の大きな変化や経営者の高齢化が進むなかで、企業規模に関係なく5割以上の企業でM&Aの必要性は高まるとみている。しかし、実際にM&Aを進める上では、適切な情報収集や仲介役となる企業との関係性などが課題という声が聞かれた。
 政府や行政は、M&Aが企業の直面する課題解決の手段として活用されるよう、引き続き取り組み支援や財政支援を行う必要がある。特に中小企業においては、行政をはじめとする公的な機関に加えて、民間の仲介業者の必要性も高まるなかで、買い手と売り手をつなぐマッチングサービスの充実などが重要となろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,632社、有効回答企業9,977社、回答率42.2%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング

内容に関する問い合わせ先
株式会社帝国データバンク データソリューション企画部 産業データ分析課
担当:池田 直紀、窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。
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