人手不足の解消に向けた企業の意識調査

- TDB景気動向調査2019年8月特別企画 -

 

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2019年9月12日
株式会社帝国データバンク

人手不足の解消法、「賃金水準の引き上げ」がトップ

〜 積極的な人材活用、「女性」「シニア」で高く、「外国人」は13.7% 〜


はじめに

 現在、就業者の増加傾向が続く一方で、2018年度の有効求人倍率は45年ぶりの高水準となるなど、労働需給のひっ迫度は増している。また、限られた人材の獲得に向けて企業間の競争が激化する一方で、求職者にとっては就業機会の拡大や賃金の上昇など明るい材料として捉えられる。こうしたなかで、人手不足による人件費の上昇が企業の収益環境に大きく影響するなか、人材の確保や生産性の向上など、人手不足の解消に向けた取り組みは企業の喫緊の課題となっている。
 そこで、帝国データバンクは人手不足の解消に関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年8月調査とともに行った。


※ 調査期間は2019年8月19日〜31日、調査対象は全国2万3,638社で、有効回答企業数は1万7社(回答率42.3%)。

※ 本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com)に掲載している

調査結果(要旨)

  1. 従業員が「不足」している企業が半数超にのぼるなか、不足している部門・役割は、「生産現場に携わる従業員」(57.2%)が最も高く、「営業部門の従業員」(47.7%)や「高度な技術を持つ従業員」(37.0%)も高い
  2. 人手不足による影響は、「需要増加への対応が困難」が50.5%で半数を超えトップとなり、五輪関連などによる旺盛な需要が続く『建設』や、荷動きが活発な『運輸・倉庫』などで高水準となった。次いで、「時間外労働の増加」(36.6%)、「新事業・新分野への展開が困難」(31.7%)などが続いた
  3. 企業において多様な人材を活用することが注目されているなか、今後最も積極的に活用したい人材は「シニア」が29.2%で最も高く、「女性」も27.9%と近い水準で続き、「外国人」は13.7%、「障害者」は1.1%となった
  4. 人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」が38.1%でトップとなった。特に「中小企業」で数値が高く、人材の確保や定着に向けた方法として賃上げが重要視されている様子がうかがえる。次いで、「職場内コミュニケーションの活性化」(36.7%)、「残業などの時間外労働の削減」(35.0%)が続いた
  5. 企業が望む人手不足の解消に向けて社会全体が取り組むべきことは、ハローワークなどの「職業紹介機能の強化・充実」が32.6%でトップとなった。他方、「職種別採用の拡大」は9.9%、「オファー型採用の拡大」は4.8%となり、採用方法の多様化は1ケタ台にとどまった

1. 人手が不足している部門・役割は「生産現場に携わる従業員」が57.2%でトップ

  現在の従業員の過不足状況ついて、正社員または非正社員のいずれかが「不足」している企業は半数超にのぼる(帝国データバンク「TDB景気動向調査」)。そこで、従業員が「不足」していると回答した企業5,461社に対して、どのような部門・役割で人手が不足しているか尋ねたところ、「生産現場に携わる従業員」(57.2%)がトップとなり、6割近くの企業で不足していた(複数回答、以下同)。次いで、「営業部門の従業員」(47.7%)、「高度な技術を持つ従業員」(37.0%)などが高い。同様の質問を行った2013年12月時点と比較すると順位の変動はみられなかったが、多くの部門・役割で不足割合が高まる結果となった。 
 「生産現場に携わる従業員」と回答した企業は『製造』『運輸・倉庫』『建設』で高く、「工事現場の現場代理人が足りていない」(コンクリート製品製造、新潟県)や「慢性的にドライバーが不足している」(一般貨物自動車運送、福岡県)といった意見がみられた。

2. 人手不足による影響、「需要増加への対応が困難」が半数を超える

 現在の従業員の過不足感について「不足」していると回答した企業5,461社に対して、人手が不足することによりどのような影響があるか尋ねたところ、「需要増加への対応が困難」が50.5%と半数を超え、最も高い結果となった(複数回答、以下同)。なかでも、五輪関連などによる旺盛な需要が続く『建設』や、荷動きが活発な『運輸・倉庫』などで高水準となった。次いで、「時間外労働の増加」(36.6%)、「新事業・新分野への展開が困難」(31.7%)なども高い。また、「需要増加への対応が困難」「納期の遅延」「現状の事業規模の維持が困難」など営業活動に関する影響は企業規模が小さいほど数値が高い傾向がみられた。一方で、「時間外労働の増加」「休暇取得数の減少」など労働環境への影響では規模が大きいほど人手不足による影響が大きく表れていた。
 企業からは、「人手不足により、工事の受注増大に影響がある」(建築工事、埼玉県)や「人材不足によりノウハウ継承・育成が遅れており、新規事業・制度の構築・改善に支障が出てきている」(管工事、北海道)、「人手不足により社員一人にかかる負担が大きくなり、健康への影響がある」(一般土木建築工事、島根県)などの声が聞かれた。

3. 多様な人材の活用、「シニア」「女性」が3割近くにのぼる

  生産年齢人口(15〜64歳)は今後も減少することが予想され、政府は女性の活躍推進や外国人材の活用を目的とした出入国管理法の改正を進めるなど、企業において多様な人材を活用することが注目されている。
  そこで、自社において今後どのような人材を最も積極的に活用したいか尋ねたところ、「シニア」が29.2%で最も高く、「女性」(27.9%)「外国人」(13.7%)と続いた。一方で「障害者」は1.1%にとどまった。
  企業からは、「シニアで働く意欲があり健康上の問題がない場合は、雇用を延長し、長く働けるような環境作りに努めている」(広告代理、大阪府)や「女性の活用を積極的に進め、労働力の不足をカバーしたい」(配線器具・配線付属品製造、静岡県)といった積極的な声があがった。一方で、外国人材については「ビザ発給の制限が厳しく、日本人同様の雇用をする企業でも長期雇用を想定するとハードルが高い」(パレット製造、新潟県)や「外国人研修生の受け入れも、受け入れるための準備に資金が必要なうえに、何をしていいのかわからない」(各種機械・同部分品製造修理、兵庫県)などの課題をあげる企業も多くみられた。

4. 人手不足の解消法、「賃金水準の引き上げ」がトップ

 自社において、人手不足の解消に向けてどのようなことに取り組んでいるのか尋ねたところ、「賃金水準の引き上げ」が38.1%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「職場内コミュニケーションの活性化」(36.7%)、「残業等の時間外労働の削減」(35.0%)が続き、「業務プロセスの改善や工夫」(31.3%)といった生産性の向上に向けた取り組みも上位にあがった。
 規模別では、最も高かった「賃金水準の引き上げ」に関しては「中小企業」で特に数値が高く、人材の確保や定着に向けた方法として賃上げが重要視されている様子がうかがえる。また、「残業等の時間外労働の削減」「休暇取得の徹底」のような労働環境に関する取り組みでは、「大企業」で高い数値を示した。
 企業からは、「職人の賃金を引き上げ、特に若者に魅力を感じられる業界にしたい」(一般管工事、東京都)や「海外の優れた人材を取り入れるために、賃金を上昇させないといけない」(看板・標識機製造、岐阜県)など、賃上げに積極的な声が聞かれた。一方で、「賃金の見直しを年末に向けて対応しているが、賃金高騰に対応しきれるか」(一般貨物自動車運送、茨城県)といった懸念も多く寄せられた。また、「若手社員向けに教育プログラムを作り、達成感を持てるようにした」(建築工事、福岡県)といった、職場における充実感を意識した声も聞かれた。
 また、雇用過不足別にみると、従業員が不足している企業では「賃金水準の引き上げ」「職場内コミュニケーションの活性化」「人事評価制度の見直し」などが高い。他方、「やりがいのある仕事を任せる」「休暇取得の徹底」などでは、総じて人手不足感に関わらずさまざまな企業で取り組んでいる様子がうかがえる。

5. 社会全体の取り組み、「職業紹介機能の強化・充実」が32.6%でトップ

 人手不足の解消に向けて、社会全体としてどのようなことに取り組むべきか尋ねたところ、ハローワークなどの「職業紹介機能の強化・充実」が32.6%で最も高かった(複数回答、以下同)。
 次いで、「働き方改革の推進」(29.7%)、「社会保障制度の見直し」(26.9%)、「労働市場の流動化」(26.8%)、「通年採用の拡大」(25.5%)などが続いた。他方、「職種別採用の拡大」(9.9%)や「オファー型採用の拡大」(4.8%)といった、採用方法の多様化は1ケタ台にとどまった。


まとめ

 企業の半数超で従業員の不足を感じているなか、本調査によると、5割を超える企業が「需要増加への対応が困難」を人手不足による影響として捉えていた。さらに、「時間外労働の増加」「新事業・新分野への展開が困難」なども上位にあげられる。
 多様な人材の活用が注目されるなか、シニアや女性を積極的に活用する企業が多い一方で、外国人や障害者は相対的に少数派にとどまった。人手不足の解消に向けた取り組みでは、人材の確保や定着に向けて企業の魅力を向上させる方法として賃上げが重要視されているほか、働きやすさの向上も重要であろう。さらに社会全体が取り組むべきこととして、ハローワークなど職業紹介や働き方改革、社会保障制度の充実などが求められている。
 企業がさまざまな人手不足の解消に向けた取り組みを講じるなかで、「外国人の雇用に対する規制緩和は喫緊の対応が必要と思われるが、特定技能などわかりにくい点が多々ある」(土木工事、大阪府)といった、制度のわかりにくさを指摘する声も多い。政府や行政機関には、きめ細やかな制度の構築や詳細な説明を行うことが求められよう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,638社、有効回答企業1万7社、回答率42.3%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング

内容に関する問い合わせ先
株式会社帝国データバンク データソリューション企画部 産業データ分析課
担当:旭 海太郎、窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。
リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。

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