深刻化する子どもの貧困率

2009年11月05日

厚生労働省が国民の貧困層の割合を示す指標である「相対的貧困率」を発表した。


相対的貧困率とは、国民の年収分布の中央値と比較して、半分に満たない国民の割合を示す指標である。日本の世帯当たりの年間可処分所得の中央値が概ね450万円程度とすると、相対的貧困層に属する世帯は、可処分所得が約225万円以下の世帯となる。


相対的貧困率については、これまで日本政府としては公式に示してこなかったが、今回、民主党がマニフェストで掲げている貧困問題改善の目標設定のために初めて公表された。


発表によると、2006年の貧困率は2003年との比較で0.8ポイント増の15.7%で、1997年以降最も高い数値となった。また、17歳以下を抽出した「子どもの貧困率」は同0.5ポイント増の14.2%となっている。


近年、貧困を理由に給食費や修学旅行費を負担できない家庭や高校中退者の増加、親が国民健康保険の保険料を滞納しているため「無保険」状態で必要とする医療にかかれない児童の発生など、「子どもの貧困」に関する問題が指摘されてきたが、今回発表された内容からもその深刻さが裏付けられることになった。


日本人は欧米人と比較して、貧困の原因は本人の甘えや怠惰にあるという考えが強いとされているが、子どもは親を選べないため貧困の責任は子ども達にはない。


政府も子ども手当の支給や生活保護の母子加算手当の復活など、子どもの教育や養育費に対する支援策を打ち出そうとしている。しかし、この不況下で雇用・所得環境がますます悪化する状況においては、仮に手当の支給がはじまったとしても現実的には子ども達のためにお金が使えたくても使えない世帯も数多く存在するだろう。


ただでさえ少子化がすすむ日本において、将来ある子ども達が生まれながらにして不公平感を感じるような悲しい世の中にならないよう、政府には確実に子ども達の明るい未来に繋がる夢や希望がもてる施策を打ち出して欲しい。

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