教育に、熱くなれ

2009年12月03日

厚生労働省は11月30日、「21世紀出生児縦断調査」(2008年)において、小学1年生の児童の4人に3人が習い事をしているとの結果を発表した。入学前に比べて、習い事をしている児童数は3割増となっており、就学による教育意識の高まりが強いことも改めて示された。


これは、教育にかかわる業界は景気が厳しい局面にあっても、需要に一定の底堅さがあることを裏付ける結果の1つであり、実際、景気DIでも「教育サービス」(31.5)は『サービス』業界を構成する15業種のなかで、生活インフラである「郵便、電気通信」(47.9)、「電気・ガス・水道・熱供給」(35.4)に次ぐ高水準となっている。


「教育サービス」は雇用の受け皿としても大きく、従業者数は約300万人、全産業の5%を占めている。これは、建設業の約400万人には及ばないものの、医療従事者数に近い規模であり、公務員の1.6倍、農業の16倍の規模である。


2009年の「教育サービス」の従業員数DI(正社員)は平均51.3で、国内景気が厳しい局面にあったにもかかわらず、全51業種中で正社員数が前年比で増加した数少ない業種(6業種)のうちの1つであった。パートや派遣社員など非正社員においても、飲食店や医療関係に次ぐ受け皿として機能しており、雇用対策を検討、実施するうえでも重要な産業といえる。


鳩山政権は、子ども手当の支給や待機児童の解消促進、高校授業料の実質無償化、大学・専門学校生の奨学金拡充など、教育を農業や医療・介護、環境関連などとともに新しい政策の柱としている。


しかし、現状では「コンクリートから人へ」の政策転換が、設備投資だけでなく個人消費にも多大な影響を及ぼしており、これ以上、極度の需要不足が長引くことは、日本の社会・経済を想像以上に混乱におとしいれる恐れもある。
だが、前政権に後戻りすることもできない。


急激な政策転換に伴う代償が大きい以上、マニフェストに示した教育など一連の景気対策が、国内需要に最大の効用を生みだすための制度設計を行う責任が、政府にはある。そして、一次的な恩恵を期待できる業界の1つ、教育産業もビジネスとしてだけではなく、人を育てることにこれまで以上の情熱を持って応えなければならない。
これらが、次代の日本を切り開く人材の育成・輩出につながることを期待せずにはいられない。

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