"景気"とは何だろうか

"景気"とは何だろうか。
こう問われれば、通常は売買や取引などの経済活動の水準や勢いと答えることが多い。しかし、これだけでは「景気とは何か」という問いに対する回答としては不十分だろう。


"景気"を広辞苑(第六版)で調べると、第一の意味として「様子。けはい」、第二に「景観。景色」、第三に「和歌・連歌・俳諧で、景色や情景をありのままに詠んだもの」などと続き、「売買・取引などの経済活動の状況」という意味が出てくるのは6番目である。


つまり、元をたどれば"景気"という言葉は経済用語として出てきたものではない。もともとは風景画(山水画)など文化的な用語として誕生したものである。そもそも、風景というのは景気の強くみなぎった場所のことを指し、この景気とはあたりの景色の精力や力のことをいうのである。そのため、風景が良いところには景気がみなぎっていなければならない。


転じて、経済的側面からみた「風景」が売買や取引といった経済活動にあたり、「景気」は経済活動に対する人びとの精力や力をいう。したがって、経済活動という「風景」には、人びとの精力や力という「景気」がみなぎっていなければならない。それゆえ、"景気"は経済活動の活力を表すバロメーターなのである。


"景気"は心理的要因によって大きく左右され、経済活動が活発化するためには多くの人のマインドが改善していかなければならない。そして、マインドの改善がまた経済に好循環を生むのである。しかし、人びとの意識は相対的なものであり、たとえ経済活動が高い水準にあったとしても、潜在的にはもっと出来るはずだと考えていれば、マインドは低くなりがちだ。


ただ、"景気"は特定の事象を指すものではなく、漠然と世の中に漂う雰囲気とも言え、捉えどころがないものである。TDB景気動向調査は、この景気に対する企業経営者の意識を捉えることを通じて、経済活動の状況を理解することを企図している。これによって、より良い日本経済に貢献する一助となれば幸甚である。

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