回復しない民間資金需要と金融緩和政策

2010年01月08日

1月5日に日本銀行から発表された2009年12月のマネタリーベースは前年同月比5.2%と高い伸びとなった。マネタリーベースは、日本銀行券(紙幣)と貨幣(硬貨)流通高と日銀当座預金の合計で計算される。マネーストックとは異なり、現金通貨となり得るもののみを計算しており、別名ハイパワードマネー、ベースマネーとも呼ばれている。


この高い伸びは日銀当座預金が同53.6%増と大きく増えたことが背景にあるとみられる。これは2009年12月1日に行われた日銀の臨時金融政策決定会合にて、新型オペレーションの実施が決定したことを反映している。TIBOR(東京市場の銀行間取引金利)は0.5%前後(3カ月物)と高水準で推移しているなか、年0.1%の固定金利で3カ月間、週1回の割合でオペレーションを行い、短期金融市場供給するというものだ。担保となる社債などの条件も緩和され、総額は10兆円にのぼる見通しとなっている。白川総裁はこれを「広い意味での量的緩和」と明言した。これを受けて、TIBORは0.4%台にまで低下した。


短期金利が下がれば、長期金利も下がることが予想され、企業の設備投資需要を刺激し、個人の住宅ローンや自動車など高額な耐久消費財の消費を喚起することが目論まれている。しかし、金利の低下は借入れの壁を低くはするものの返済めどが立たなければ需要は生まれないだろう。民間の資金需要が回復しないことには、市場に出回る流通量は増加しない。
また、金融機関への資金が潤沢になっても、返済猶予法の施行などを受け、金融機関が企業を見る目は厳しく、貸出審査は厳格な状態が続いているという声もある。


財政政策は決定に時間がかかる、金融政策は効果が出るのに時間がかかるという性質はあるが、既に幾度となく行われた補正予算の効果も期限切れの際の反動が懸念される始末であり、景気が良くなったとは決して言えない。2009年12月の「返済猶予法案後の企業の意識調査」では需要の本格回復は2011年以降という見込む企業が4分の3にのぼるという結果がある。
暗雲の立ちこめる経済情勢のなか、2010年が幕を開けた。

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