信頼されるGDP統計の確立を望む

内閣府は国内総生産(GDP)の推計方法や統計の作成体制の見直しを発表した。2009年12月に公表された2008年度GDP確報や2009年7~9月期GDP2次速報に相次いで不備が見つかったためだ。


GDP確報は工業統計や商業統計など詳細なデータを使って速報値を見直し、より精度の高いGDP統計を作成するものである。12月2日公表ののち7日に訂正されたが、その原因は2009年1~3月期の個人消費の推計で集計用ソフトへの入力式を担当者が間違えるという、単純なものであった。しかし、その結果、2008年度の実質GDP成長率は前年度比3.5%減→3.7%減、名目GDPは同4.0%減→4.2%減へと下方修正された。個人消費についても、実質で同1.5%減→1.8%減、名目で同1.6%減→1.8%減へと見直された。


現在のGDPの推計方法になった2003年以降では、過去に計32回のミスが発覚しているが、0.1ポイント以上の修正となったのは1回だけであり、今回ほどの大幅な修正は初めてのことである。


また、GDP2次速報は1次速報の公表後に新たに利用可能となった統計データを盛り込んで再推計するものである。2009年7~9月期GDP2次速報では、2008年度確報の修正に加えて、設備投資や在庫投資で大幅な修正があり、実質GDPは前期比年率4.8%増→1.3%増、名目GDPは同0.3%減→3.4%減へと大幅に下方修正された。設備投資にいたっては実質で同6.6%増→10.6%減、名目で同2.5%増→13.7%減と、増加から減少へと大幅に修正された。


今回のようなミスや大幅修正は、日本の統計自体に対する不信感につながりかねない深刻な問題である。内閣府は2010年12月から新しい推計方法による発表を開始する予定としている。また、GDP統計の作成にあたる人員を現在の51人から58人へと増員する計画である。日本はIMFからもGDP統計の人員拡充の勧告を受けていることもあり、これはぜひ実行して欲しいところである。しかし、他の主要国では100~300人程度の担当者を擁してGDP統計の作成に当たるのが通常であり、依然としてマンパワー不足の感は否めない。


GDP統計は経済統計の代表格であり、その動向は市場のみならず、景気対策や社会保障政策などさまざまな政策立案にも影響し、最終的に社会全体に波及していくのである。内閣府にはより信頼されるGDP統計の確立を望む。

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