電子書籍は音楽配信の夢をみるのか

アップル(米国)からタブレット型デバイスiPadが発表された。また同日、電子書籍のオンラインショップiBooksの立ち上げも発表された。


iPadの大きな特徴点は電子書籍リーダーの機能に特化されていることだ。既存のパソコンやスマートフォンにも電子書籍リーダーの機能は存在するものの、スマートフォンでは画面が小さすぎ、モバイルパソコンでは重量などの携帯性が損なわれるなど問題を抱えていた。このため、電子書籍市場の成長は限定的であった。


しかし、電子書籍リーダー機能に特化されたアマゾン(米国)のKindleやソニーのReaderなどが昨年アメリカのクリスマス商戦で大ヒットし、ここにきて電子書籍市場は急拡大した。
同市場ではアマゾンやグーグルがコンテンツ数を急速に伸ばしている。日本では、2月に大手出版社21社による電子書籍協会の発足が予定されているものの、再販制度による定価販売や、著作権や版権などの権利問題もあり配信のプラットフォーム形成で大きく遅れている。


電子書籍や電子書籍リーダーの歴史を紐解くと、パナソニックのΣbook、ソニーのLIBRIeなど日本企業は常に先行していた。しかし、上記のような問題もあり市場形成は成功せず、いずれも日本での配信サービスを終了した過去がある。


日本はかつて、ソニーのウォークマンに代表される携帯音楽プレーヤーで圧倒的なシェアを誇っていた。しかし、アップルの世界的な音楽配信システムiTunes storeとiPodの出現を契機に音楽市場はCDなどの物理販売から音楽配信に様変わりした。近年は、CDの売上低迷に反比例するように音楽配信が成長しており、2008年の音楽配信市場(全世界)は前年比25%増の約37億ドルに成長した。現在、日本企業は音楽配信市場、端末販売ともに大きくシェアを開けられている。


電子書籍配信市場で同じ轍を踏まないためには、メーカー、出版、著作者が一体となって、海外の市場を取り込めるようなプラットフォームを形成することが今後は求められる。

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