日本のスポーツの発展に期待したい

2月13日(日本時間)に開幕したバンクーバー冬季オリンピックが3月1日、閉幕した。出場した選手たちの活躍もあり、テレビの前で応援していると、今まで知らなかった種目を好きになったり、これからオリンピックを目指したいと思う子どもたちも多かったのではないだろうか。


しかし、日本のスポーツ界を取り巻く状況は厳しい。2009年11月に行われた政府の事業仕分けでは、日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化費と日本体育協会(日体協)のスポーツ指導者養成事業など計32億円が対象となり、1~2割縮減すべきと判定された。結局、2010年度の政府予算案ではJOCへの補助は4%、日体協への補助は7%の削減にとどまったが、これからも予算削減の波はやってくるであろう。


日本の財政には単独のスポーツ予算という項目はない。体力づくり関連予算としてさまざまな名前が付けられており、文部科学省や厚生労働省、経済産業省など8省庁にまたがっている。なかでも国土交通省が同関連予算の約4割を占める。実は、このような縦割り行政が壁となり、日本のスポーツ界発展の制約にもなっている。


多くの主要国では各国のスポーツ界を統括する組織を持つ。例えば、イギリスでは「文化・メディア・スポーツ省」、フランスは「青少年・スポーツ・非営利社団活動省」がスポーツ行政を担う。ドイツは「内務省」が民間のドイツスポーツ連盟やドイツスポーツ援助財団と連携している。各国とも、このような組織が選手や指導者の育成、人材発掘、施設整備、スポーツ振興、薬物対策、青少年スポーツ、地域スポーツ、スポーツマネジメントなど、トップアスリートから不規則型スポーツまでスポーツ界全般をまとめる役割を担っている。


逆に、このような組織を持たないのが日本とアメリカである。ただ、アメリカはプロ・スポーツシステムが発達しており、スポーツを楽しむ環境は整っている。そのどちらも不十分なのが日本であろう。日本のスポーツ行政に関する法律としてはスポーツ振興法があるものの体系的・総合的なものではなく、文部科学省設置法第四条に所掌事務として5項目があるだけである。そのため、日本のスポーツ界を管轄する組織としてスポーツ省などの設置がしばしば議論の俎上に上ってくるのである。


日本ではかつて、3S政策(Screen映画・Sportsスポーツ・Speed車)という国民を退廃させるものの一つとしてスポーツが取り上げられた。しかし、今では多くの人がスポーツの素晴らしさを感じているはずだ。スポーツ振興法に基づくスポーツ振興基本計画にはスポーツの意義が的確かつ多面的に示されている。スポーツの意義や理念は、日本のスポーツの歩みを誰よりも知っているスポーツ界が国民に対して積極的に語らなければならない。

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