環境テロには毅然とした対応を

2010年03月03日

今年に入り、アメリカの環境保護団体「シー・シェパード」(Sea Shepherd Conservation Society:以下SS)による日本の調査捕鯨船に対する妨害行為が相次いでいる。SSはこれまでも日本やノルウェーなどの調査捕鯨船に対して、悪臭を放つ液体を投げつけたり、レーザー光線を照射するような妨害を行ってきた。しかし、最近ではロープを船のスクリューに絡ませたり、船を体当たりさせるなど、双方の乗組員の生命にもかかわるような暴力行為にまでその活動をエスカレートさせている。


さまざまな主義主張があるのは認めるが、国際捕鯨委員会で認められている調査捕鯨をこのような形で妨害することはテロ行為であり、SSは妨害活動を即刻やめるべきである。


高速妨害船の建造や兵器の購入など、多額の費用がかかる妨害活動を止めるには資金源を絶つのが手っ取り早いが、個人からの寄付をはじめ、アメリカの大手アウトドア用品メーカーなどに加えて、著名なミュージシャンや俳優などもSSの大口スポンサーになっていると言われている。このようなテロ行為に資金援助することが、企業ブランドや自分達のイメージアップにつながると考えているのか理解に苦しむが、最近の派手な妨害活動がさらに多くの寄付をもたらすという悪循環となっており、SSを資金面から追い込むのは時間がかかりそうだ。


また、日本政府もこれまでSS活動家の逮捕などをめぐっては、逆にSSの活動を宣伝することになり、反捕鯨運動を助長させると及び腰だったとされる。しかし、度重なる妨害活動を受け、ようやく2月の日豪外相会談でこの問題を主要テーマの一つとして取り上げたが、豪州の政治事情もあり、話し合いは並行線に終わってしまった。


反捕鯨運動とテロ行為はまったく別次元のものである。今後、犠牲者を出さないためにも、テロ行為には逮捕や処罰など毅然とした対応を取らなくてはならない。日本政府はSSの妨害行為を詳細に把握・公表し、今後も粘り強く世界各国の理解と協力をえる努力を続けていく必要があろう。

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