成長国の需要を取りに行く、攻めの姿勢

2010年03月03日

人口約13億人を抱える中国の、2009年の実質GDPは8.7%増と世界各国がマイナス成長となったなか、急成長している。インフラ整備など公共投資を主体とした内需が力強く、公共投資にともなう雇用・所得の改善により消費を生む好循環となっており、同様に2010年も高い伸びが見込まれている。日本は景気回復に向け、上海万博に向けた投資や輸出など中国の需要を取りこぼすことは出来ない。


中国は2008年11月に打ち出した4兆元の財政支出と消費喚起策、金融緩和により国内市場のお金がだぶつき、一部は不動産や株式投資へお金が流れた。現在の投機目的による不動産価格の高騰はこのような資金を元手としているため、一般市民の住宅需要とはまったく関係のないところで行われている。銀行の新規融資額はすでに、年間新規融資目標額の約2割に達したという報道もあり、マネーサプライは急増している。


不動産バブルへの対策として、中央銀行業監督管理委員会は企業が運転資金として借り入れた資金を不動産購入に流用することを禁じ、中国人民銀行は大手銀行に適用される預金準備率を2010年に入り、2度にわたり0.5%ずつ引き上げ、過剰流動性に対する抑制の姿勢をみせはじめている。市場では、政府の金融引き締め姿勢が中国経済に冷や水をさすとみる投資家もいるが、幸い、前述した大型財政支出の残りや、農村部も含めた生活水準の引き上げを通じた内需拡大は引き続き中国経済を押し上げ、上海万博効果も加わり成長を続ける見込みである。


日本は、中国の需要を攻めの姿勢で取りに行く必要がある。先だって、2010年の春節(2月14日)による大型連休があり、来日した中国富裕層により一部の家電量販店などでは、特需があった。しかし元はといえば日本が獲得しに行った需要ではない。自らが需要狩りに行かなくてはいけない。日本が時間と経験により獲得したノウハウ(製品)を諸外国の企業は欲しがっている。リスクがともなう新興国経済への進出は、大企業や商社などが行うものであり自社には関係がないと考える経営者も多いと感じるが、業況が厳しいなかでも攻めの姿勢を忘れないでいることが、新たな成長につながるのではないだろうか。

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