介護従事者のキャリアパスを示せ

総務省が発表した1月の労働力調査では、製造業の就業者数(1,053万人)が前年同月比で75万人減少し、介護サービスが含まれる医療・福祉の就業者数(642万人)は同26万人増加した。
企業の雇用過剰感が高止まりし、採用を控えるなか、慢性的な人手不足が続いていたと介護業界に注目が集まっていることが伺える。
介護業界は、高齢者の増加などで需要拡大が見込めることとから、政府も今後の成長産業と位置づけ重点的に力を入れている産業でもある。


しかし、介護従事者を取り巻く環境は非常に厳しい。
厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査によると、2009年の福祉施設介護員の月収(男女計、きまって支給される現金給与額)は調査職種129職種中116位の21万3,900円となっている。また、ホームヘルパーは20万2,500円(122位)で、公的資格である介護支援専門員(ケアマネージャー)(2009年度合格率21.0%)でも26万400円(83位)にとどまっている。給与所得者の平均月収が30万4,167円(国税庁、平成20年分民間給与実体統計を12で除して算出)ということを鑑みると、世帯主として一家を養うには厳しい収入であることがうかがえる。
また、夜勤などによる変則勤務や一部利用者からの暴言や暴力など、精神的、肉体的に厳しく離職率も一般的な職種に比べ高いという調査結果もある。


現在のような雇用環境が厳しく求人数が少ない時期には介護に人材が集まるが、介護従事者の所得や労働環境の改善が行われなければ、過去の事例から景気回復とともに好条件の職種に人材が大きく流失する可能性は高い。


介護産業を持続可能な成長産業にするためには、介護従事者が安心して働ける労働環境の整備とともに、長期的な生活を営めるキャリアパスを構築することが今後も政府に求められる。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。