貫いた信念にエール

4年前のトリノ五輪前の全日本フィギュア選手権では、浅田真央選手は、さほどのプレッシャーを感じさせることもなく、持ち前のジャンプ力を活かした伸び伸びとした演技をしていた姿があった。


しかし、その後のバンクーバー五輪までは苦悩の4年間となった。採点方法の変更により得意のジャンプの踏み切りや着氷において、ことごとく細かい部分を指摘されるようになり、一時期、精細を欠いていたこともあった。しかし、持ち前の高い向上心と技術力で、2009年末の全日本選手権で優勝し、なんとかバンクーバー五輪の出場キップを手に入れた。


「真央には、プレッシャーに背を向けるのではなく、プレッシャーと対峙すること」の重要性を説き、スランプから立ち直らせたという浅田選手のコーチ・タラソワ氏の談話があったが、浅田選手は見事にプレッシャーを克服しショート、フリーともに難易度の高いトリプルアクセルを決めた。しかし、結果は1位に大差をつけられての2位となった。


今回のバンクーバー五輪では、1位キム・ヨナのフリーの得点は、150.06で、4回転を成功させた男子の小塚選手のフリー得点151.60にほぼ匹敵するほどの高いスコアとなり、男子フィギィアでも、4回転を回避し無難にプログラムをまとめた米ライサチェクが優勝した。これらの結果から、五輪後は採点方法でしばらく物議を醸すこととなりそうだが、タイムのみで白黒がつくわけではない採点競技では、いたしかたない部分があるのかもしれない。


ただ、4年に1回の五輪で無難な演技は見たくない。競技とは、技を競い合うものである。
より難易度の高いことに取り組む姿は、見ている人々の手に汗を握る感動を与える。次回開催のロシアのソチ五輪に向かって、これからもメダルを取りに行く演技ではなく、自分の限界に挑戦する姿を見せ続けて欲しい。

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