発展を実感することによるさらなる成長

2010年04月05日

成田空港の年間発着枠が20万回から22万回に増加する。新規路線を開通する4社のうち2社は、ドバイを拠点としているエミレーツ航空とアブダビを拠点とするエティハド航空のアラブ首長国連邦の航空会社である。なかでも、アラブ首長国連邦の1つであるドバイは都市国家として大きな成長をみせている。


2009年11月に国営企業が債務危機に陥った事で投資家が資金を引き揚げるドバイショックがあったが、現在もドバイは個性的な高層ビルを建設し、国策として経済特区を設け、海外資本を積極的に誘致している。所得税も消費税もなく、国外出資比率や現地人の採用比率の規定といった海外企業が進出する際の壁となり得る障壁を最小限にとどめている。
また、ドバイ国際空港は貨物輸送の利便性が高いことや航空自由化を導入することで、中東最大のハブ空港となった。ドバイは空の道と観光施設の充実などをはかり旅行誘致も積極的に行うなど、観光産業に注力している。また、国面積が狭く、原油埋蔵量も限られているため、石油産業に依存しない経済構造の構築を目標としており、次世代の主産業ともなり得る原子力や太陽光発電などの開発も進めている。


ドバイの巨大プロジェクトの数々は、自国民にも海外に向けても目に見えた「発展」というものを提示している。投資が大きい分、投資家のデフォルト不安はつきまとうものの、将来を見据えた積極的投資を行っているという面では高い評価ができる。


世界的にみて経済が成熟すると発展の象徴となるものを対外的にみせる難易度は高まるだろう。かつて、東京タワーは日本の発展の象徴であったが、現在の日本には国を代表するような発展の象徴となるものがない。ひいては日本人のマインド面でも「発展をしていない」、「停滞している」といった認識を植え付けてしまう。
新興国の発展が著しい要因の1つは発展しているという感覚を人びとが実感できることである。先進国は自国の中だけでは"先進"具合を実感することが出来ない。ここに、発展の伸び悩みが隠れているのではないだろうか。

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