受動喫煙防止条例をビジネスチャンスに
全国の地方公共団体で初となる神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例が2010年4月1日に施行された。病院、学校、劇場、官公庁など公共的施設を第1種施設とし禁煙が義務付けられ、飲食店、ホテル・旅館、カラオケボックスなどの第2種施設は禁煙・分煙の選択性となった。違反した場合、施設管理者には過料2万円、禁煙区画で喫煙した人には2,000円が徴収されることとなった。
条例に合わせ、日本マクドナルドが県内全店を全面禁煙に、ロイヤルホールディングスもグループ傘下の県内全店で客席部分での全席禁煙を実施、第一興商は運営するカラオケ店で1店舗25%以上の部屋の禁煙化を図るなど大手では条例に向けた対応を終えている。
大手と違って分煙化を図るための資金力に乏しい小規模企業への配慮のために、第2種施設のうち調理場を除く床面積が100m²以下の小規模飲食店や床面積700m²以下の宿泊施設、パチンコ店などの風営法対象施設は特例とし「禁煙・分煙は努力義務とする」など条件が緩和されている。
しかし、喫煙者は喫煙場所を求めて流浪することに変わりはないだろう。
日本たばこ産業の「平成21年全国たばこ喫煙者率調査」では、喫煙率は男性38.9%、女性11.9%。これは喫煙者向けマーケットとして潜在需要と捉えることができる。
今後、神奈川県での客足の動向をみて、他の自治体にも同様の条例が広がる可能性はある。街で喫煙できる場所を探す流浪の喫煙者に対して、「喫煙者のみが入店可能」を全面に押し出した床面積規制内での店舗展開を図るような、新たなビジネスも生まれてくるかも知れない。
「規制はチャンス」という視点が必要であるし、ビジネスチャンスはスピードが重要になる。意思決定スピードの早い小規模企業だからこそ可能なこともある。なにより、流浪する喫煙者は、肩身の狭い時代になったからこそオアシスを待ち望んでいるのだから。