新しい輸送用機械にかける安全への思い

2010年05月10日

JR西日本の福知山線が兵庫県尼崎市にて脱線し、運転士含め乗客107人が亡くなり、562人が負傷した事故から5年がたった。事後原因の追及がされ、歴代社長などが業務上過失致死罪で起訴されている。この事故は人為的なミスが引き起こしたものであるという根本的な要因はあるが、組織的にも、利便性と収益確保のため、費用のかかるブレーキ対策をおろそかにしていたことや、厳しい勤務規定などの問題点が明らかになった。JR西日本が安全対策を経費削減の対象にしていたことは決して許されない。


人類文化の発達に輸送用機械は欠かせないものとなった一方で、大規模事故などの負の面を併せ持つ。しかし、これまでの事件・事故が、人為的ミスの防止、システムの作成などの安全対策への教訓となり、私たちの生活が成り立っていると言っても過言ではない。


2010年春、自動車業界では富士重工業が最新技術を加えた自動制御システムを開発し、新型レガシィよりシステム搭載が可能となった。対象物への衝突の危険性を関知した場合、自動ブレーキが働き車両を停止させるという。今後、エアバッグのように搭載が常態化することで、追突事故などの重大事故が3割は削減されるという。このように、輸送用機械産業の安全対策開発が終わることは決して無い。


JR東海はリニアモーターカーの開通を2025年予定から、2027年に延期した。平成21年度の財務状況が芳しくなかったことで設備投資資金の確保が難しくなったという。しかし、資金面が潤沢でないために、開通を延期するならまだしも、安全面に対する投資が削減されるようなことは二度とあってはならない。
リニアモーターカーは従来の鉄道とは仕組みが違い、高速走行中は車輪がない。新幹線などに比べて安全性が高いという報告もあるが、万が一高速で走るリニアモーターカーが事故を起こしたら乗客はもちろんのこと二次災害など、被害規模は電車とは比較にならないほど大きくなることが予想される。凄惨な事故は誰も望まない。特に新しい輸送用機械であるリニアモーターカーは、ありとあらゆる進んだ技術を応用・開発して、より安全な乗り物となるようにしなくてはいけないのだ。

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