防疫・検疫戦略の見直しを

家畜伝染病である口蹄疫(こうていえき、学名:Aphtae epizooticae、英語: Foot-and-mouth disease、通称FMD)の拡大が続いている。


口蹄疫とは牛や羊、豚などの偶蹄類(ぐうているい)に感染する家畜伝染病である。人間が感染する可能性は極めて低く、また感染した家畜を食肉するうえ でも問題がないとされる。しかし、偶蹄類が感染する伝染病の中でも最も伝染力が強く、完全な治療方法が確立されていないことなどから、感染の疑いがもたれる生体は治療を行わず速やかに殺処分を行うこととなっている。


国内では今年3月末頃に宮崎県で国内感染体が確認されて以降、拡大の一途をたどり5月9日現在、宮崎県のみで6万4,354頭(うち豚5万9,607頭)が殺処分の対象となった。今後も、野生動物や人、車両等による伝播によって拡大することが懸念されている。
現状では、家畜の移動・搬出制限区域が4県(宮崎・鹿児島・熊本・大分)に拡大しており、鹿児島県では小学校で宮崎行きの修学旅行が中止されるなど、畜産業界のみならず各方面にも影響が出始めている。


近年の例では2000年春、宮崎県と北海道でO型の口蹄疫の発生確認されており、この際は、口蹄疫防疫の基本原則に則した防疫が行われたこと、発生した口蹄疫が非定型的であったことなどもあり740頭の被害にとどまっている。
しかし、今回は感染が確認された際の政府や農林水産省の対応が遅れたことやマスコミ報道、自治体からの広報などによる正確な情報伝達が行われなかったことなどさまざまな問題点が指摘されている。


食料自給率が低い我が国において、農林畜産物の検疫、防疫体制は非常に重要である。ましてや、伝染病や有害鳥獣の対策は都道府県など一自治体での対応は極めて困難であり、政府や中央官庁の対応が要となる。


国民の健康、安心を守るためにも、伝染病発生時におけるマニュアルの作成や訓練の徹底など、検疫・防疫体制の具体的な強化と対策が強く求められる。

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