高齢社会における介護予防

2010年05月10日

日本は高齢化が進み、介護が必要となる人は年々増加しており、今後も増加が見込まれる。高齢者が、要介護状態になることをできる限り防ぐこと、そして要介護状態であっても、状態がそれ以上に悪化しないようにするために厚生労働省の「介護予防事業」がある。年を重ねても介護が必要なく元気でいられることは高齢者本人にとっても、その家族にとっても大切なことだ。また、高齢者の増加により年々膨らんでいる介護費用の抑制にも有効だ。


「介護予防事業」は、各市町村が実施しており、大きく2つの対象に分けて行われている。1つは一般高齢者向けの施策として、講演会の開催や介護予防手帳の配布などにより介護予防を広め、できるだけ自立して元気で過ごすための取り組みが盛んな地域社会をつくることだ。もう1つは特定高齢者向けの施策として、体の機能が弱まってきていて、近い将来、介護サービスを利用する可能性がある高齢者に対して、運動機能の向上、栄養改善、口腔機能の向上など弱っている機能を回復するような事業を提供して、要支援・要介護状態にならないようにすることだ。これは早期発見、早期対応が大切で、体の機能が弱くなっている高齢者を早く見つけ、介護サービスを利用する前に、機能回復に関する事業に参加してもらい、弱っている機能を回復させることを目的としている。


昨年の行政刷新会議の事業仕分けでは、効果が疑問視され、予算要求の縮減と判定された。無駄な費用が費やされ、予防の効果が出なければ、介護費用の抑制につながらない。介護予防事業は、今後高齢化が進む日本にとって、ますます重要となる施策であるため、要介護状態になる可能性のある高齢者の把握方法や、予防プログラムなどを見直し、費用対効果を高める必要がある。また、介護予防事業そのものが、十分に知られていないことも問題であり、高齢者だけでなく広く介護予防の大切さを広めて、一人ひとりが元気なうちから定期的な運動などにより自主的に健康を保って、生きがいをもつことが必要だ。できるだけ元気で、高齢期を楽しめる社会が、望まれる高齢社会だと思う。

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