物価における高校授業料無償化の影響

鳩山首相は6月2日、普天間問題や「政治とカネ」などを理由として辞任する意向を表明した。2009年9月16日に発足した鳩山政権は8カ月半の短命となったが、その間に実施された政策のひとつに4月から導入が始まった高校授業料の実質無償化がある。


この政策は、教育予算が年々減り続けているなか、就学援助がなければ経済的な理由で十分な教育を受けられない子どもたちが増えている、ということを背景にしていた。事実、高校授業料は2005年以降、公立で年平均1.0%、私立で同0.6%継続的に上昇していたのである。


さて、高校授業料の無償化は統計的にみて物価にどの程度の影響を与えたのだろうか。消費者物価指数(総務省)によると、4月の公立高校授業料は前年同月比-98.5%、私立高校授業料は同-25.1%の下落となった。4月の生鮮食品を除く総合指数(CPIF)は同-1.5%だったが、そのうちの-0.54ポイント分は高校授業料無償化によるものであった。つまり、高校授業料無償化の影響を除くと、CPIFは同-1%程度だったとみられる。


2010年に入ってから、CPIFの下落率は概ね同1.2~1.3%ほどだったため、4月は物価の下落率が一段と拡大したと報じられる場面もあった。しかし、これは政策による影響が反映された結果であり、物価の下落は緩やかではあるが縮小しつつある。日本経済はいまだデフレから脱却できていないが、統計には状況の変化がさまざまな形で現れてくるため、細部を慎重にみていくと多くの示唆を得ることができる。

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