証券会社は公的責任を自覚せよ

2010年06月03日

2009年11月の東証マザーズへの上場の際、有価証券届出書に決算情報を虚偽記載したとして、半導体製造装置メーカーである株式会社エフオーアイ(神奈川県相模原市)が金融商品取引法違反容疑で証券取引等監視委員会の強制調査を受けた。すでに同社の複数の幹部が証取委に対して容疑を認めており、届出書で約118億円としていた売上高について、実際には2億円程度であったと供述しているという。同社は5月12日の強制捜査開始からわずか10日後の5月21日に破産を申請、あっという間に倒産してしまった。


同社の粉飾は、ファンドからの出資金を簿外に移し、それを売上金として回収する手口で売上高を水増ししたとされているが、売上高を60倍も水増ししている事実を見逃すような上場審査とは一体何を審査しているのだろう。販売先への売掛金残高の確認や在庫などをチェックすれば、これだけの水増しはそれほど困難さをともなわずに解明できるのではないだろうか。


監査を行った会計事務所、最後の砦となるべき証券取引所の上場審査の甘さにも驚くが、何よりもこの会社と上場準備・支援活動で長期間接しながら何も見抜けなかった主幹事証券会社の責任は重大であり、この詐欺というべき事件の共犯と指摘されても仕方がないと思う。


この事件が、すでに度重なるコンプライアンス違反企業の続出により投資家離れが進む新興市場にさらなる冷や水を浴びせることは確実で、それは結果的に証券会社自身の首を締めることにも繋がる。
上場を支援する証券会社は、民間企業として収益を確保することはもちろん重要であるが、証券市場という公器に企業を送り出すという点で自らの公的責任を自覚すべきだ。今後はこれまで以上に厳しく広範囲な審査を徹底し、上場企業としての適格性に欠ける企業が証券市場に入ることを見逃してはならない。

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