成長戦略が求められるエネルギー政策

2010年06月03日

アジアを中心としたエネルギー需要の拡大による資源確保競争の熾烈化、投機資金による資源価格の乱高下、環境問題など、エネルギーに関わる問題は多い。日本は資源が少ないが、エネルギーは生活や経済活動に不可欠なものであり、持続的な国の発展にとってエネルギー政策は重要なものである。


経済産業省は国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の最終案をまとめ、6月中の閣議決定を目指している。この計画は2030年に向けた目標として、(1)自主エネルギー比率を現状の約38%から約70%にする、(2)廃棄物を出さないゼロエミッション電源比率を現状の約34%から約70%にする、(3)暮らしのエネルギー消費から発生するCO2を半減、(4)産業部門において世界最高のエネルギー利用効率の維持・強化、(5)エネルギー関連製品・システムの国際市場でわが国企業群が世界トップクラスのシェアを維持・獲得の5つを挙げている。


資源が豊富な産油国でも原子力発電や再生可能エネルギーの導入に動いている。アラブ首長国連邦(UAE)では「マスダールシティー」の建設が進んでいるほか、サウジアラビアのアブドラ国王は原子力開発などを担当する新たな政府組織「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市」創設の勅令を出した。環境意識の高まりや、産油国における急激な人口増加にともなう石油需要の急拡大などもあり、石油依存の経済構造から脱却し成長していくためである。


「エネルギー基本計画」は日本を発展に導く要素の1つとなれるのだろうか。ゼロエミッション電源比率を高めるために14基以上の原子力発電所を新増設するとしているが、原子力発電は安全性などに懸念があり、普天間基地問題のように住民の大きな反対を受け設置ができないかもしれない。また、エネルギー・環境分野はどの国も力を入れており、国際市場において日本のエネルギー関連商品が確実に勝ち残れる保証はない。日本をどう発展させていくのか、そしてエネルギーをどう供給し、どう使用していくのか、エネルギー産業をどう育てていくのか、道筋を立て目標を実現させていかなければ、世界から取り残されてしまうだろう。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。