たばこ税値上げで、低下が進む喫煙率

今日(6月3日)は、禁煙週間(5月31日~6月6日)の中日。たばこを吸わないことが一般的な社会習慣となるよう、さまざまな対策を講ずるべきであるという世界保健機構(WHO)の決議により1988年に世界禁煙デーが制定された。その後1992年に厚生労働省が世界禁煙デーに合わせて禁煙週間を設け、毎年テーマを決めて全国で喫煙や受動喫煙からくる健康被害等についての普及・啓発が行われている。今年のテーマは「女性と子どもをたばこの害から守ろう」と受動喫煙の問題に重きが置かれている。


昨今の健康志向の高まりや受動喫煙防止対策により喫煙場所は減り、喫煙率も年々減少している。2009年の成人男性の平均喫煙率は38.9%で(日本たばこ産業「全国たばこ喫煙者率調査」)、比較可能な1965年以降のピーク時の 83.7%(1966年)から半分以下にまで喫煙者は減った。
喫煙者の減少とともに、紙巻きたばこ販売本数(社団法人日本たばこ協会発表)も減少。2009年度は前年度比4.9%減の2,339億本で11年連続の前年割れとなっている。


また、今年10月からは、たばこ税増税にともなう値上げがある。2006年7月の前回増税時には、主力銘柄のたばこ一箱の小売価格(消費税込み)は270円から300円へと11.1%引き上げられ、以降の販売数量は毎年前年比平均で4.6%減となった。今回の増税額は1箱70円となるため、日本たばこ産業(以下、JT)の代表商品の小売価格(同)は300円から36.7%増の410円へと大幅値上げとなる。JTも通年ベースで25%の需要減少を見込んでおり、一層のたばこ離れが進みそうだ。


こうしたなか、JTは5月中旬より東京都限定で無煙たばこの発売を開始した。種類はかぎ用(葉たばこの粉を使用した、口腔、鼻腔で香味を楽しむたばこ)で、1箱にカートリッジ2本がつき、1本につき半日から1日楽しめるという。火を使わず煙もでないため、喫煙場所の制限も少なくかつ副流煙の問題も解決できる。最近の分煙や禁煙の流れのなかで、肩身が狭くなっている喫煙者にとっては朗報だ。


たばこメーカーにとってもメリットがありそうだ。「かぎたばこ」の場合、たばこ税は紙巻きたばこ1グラムあたりの税額が適用される。同商品の場合紙巻きたばこ2.8グラム換算となり、たばこ税は12.2円に過ぎず、消費税抜きの小売価格に占めるたばこ税が占める割合は、代表的な紙まきたばこの61.2%に対して4.3%となる。
メーカーにとっては、今回の増税にともなう大幅値上げで失われる販売量はあるが、あらたな喫煙方法の提案により、かぎたばこの認知度が高まれば、たばこ税の占める割合からすると利益率の高い商材を提供できることとなる。


喫煙者、メーカーともに、メリットがありそうな同商品をきっかけに、禁煙に取り組む方も多いと思われ、喫煙率の低下や副流煙問題の解決の糸口となることを祈念したい。

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