国民の声に耳をすませて

2010年07月05日

7月11日に投開票が行われる参議院選挙には従来の参院選とは違った緊張感が漂っている。というのも、現連立政権になり始めての国政選挙であり、昨年の政権後退以来の国民の声を聞く機会だからである。
各党の打ち出した公約のなか、民主党が「Manifesto2010」で提唱した10大項目のうちまず挙げているのが「ムダづかい 行政刷新」と「政治改革」である。前者の中には国の総予算の全面的な組み替えをさらに徹底することや事業仕分けなどの手法を通じた全特別会計の見直しを、後者には議員定数や経費の削減が記されている。


2010年6月のTDB景気動向調査特別企画「参院選に対する企業の意識調査」にて「行政改革による無駄の洗い出し」を推進すべきと考えている企業が1万1,257社中9,564社、構成比85.0%となり、非常に多くの企業が無駄の洗い出しを望んでいる事がわかった。企業からの声をみると、「事業仕分けをさらに強化し税金の浪費を徹底的に洗い直す。公務員の天下り・渡りを撤廃し、そのうえで税制の見直しをする必要がある」(飲食料品卸売、栃木県)など、無駄の洗い出しは大前提として行うべきであるといった内容が多い。


財政危機といわれる状況にあるなか、消費税率の引き上げなど国民負担が増すことに抵抗がありつつもやむなしと考える企業も多い。しかし、国民負担を増やす前に削れるところは削らなくてはいけないのである。戦後約65年の間、築き上げられた現在の行政は、幾度とない競争や不況を乗り越えてきた国民の目から見て、非効率や不採算な部分があるのは事実である。それを一部とはいえ白日のもとにさらしたのが事業仕分けであった。しかし、これは新しい政策としてではなく、常に行っていかなくてはいけない。


先の衆院選で政権交代を望んだのは国民から過去を断ち切った新しい政治というものを創造して欲しいというメッセージであったように感じる。次の参院選での結果をどのようなメッセージとして連立与党が受け取るか。国民の期待を背負う以上、結果だけではなく国民の声に耳をすませてほしい。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。