静かに告げられた国産ファイル圧縮形式の開発終了

国産ファイル圧縮形式LZHの開発終了が開発者から告げられた。
LZHは1980年代のパソコン通信やフローピーディスクでのデータのやり取りが主流だった時代から、国内はもとより世界で幅広く利用されたファイル圧縮形式である。1990年代になりハードディスク容量の増加、インターネットの普及が進むなかでも広く利用された。国内では個人のみならず企業でも利用され、事実上最も利用されていたファイル圧縮形式といっても過言ではない。


LZHの普及の背景には現在世界で主流となっているファイル圧縮形式であるZIPの歴史を紐解かなければならない。当時ZIPを利用するために必要であったソフトは有料であった。また、ZIPファイルは当時のMac OSとWindows OS間での相互利用ができなかった。一方、LZHは有料・無料ソフトのいずれでも利用が可能で、Mac OSとWindows OS間のデータの利用も可能であり、1990年代に企業で使われるパソコンのOSが業務や業種により異なっていた時代であったことも手伝い、幅広く利用された。


そんなLZHが今年6月5日、開発者の宣言によって開発の終了が告げられた。
LZHは、当初からファイル名にUnicodeが利用できないことや、暗号化機能がないことなどの問題点が指摘されていた。さらにZIPが現在のMac OSやWindows OSで事実上無料利用ができるようになったこともあり、利用が縮小傾向にあった。
開発終了の要因として開発者は、LZHが多くのウイルス対策ソフト・システムが検疫できないことを大きな理由として挙げている。


しかし、これだけ国内で普及したファイル圧縮形式がほぼ個人に近い開発者や関係者に支えられていたことはあまり知られていない。技術や知識は一朝一夕には発展しない。LZHの開発終了は、優秀な技術や知識の発展をサポートする仕組みを整える重要性を社会に投げかけているのではないだろうか。

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