人口減少下、貴重な労働力が活躍するために

住民基本台帳に基づく3月末時点の総人口が3年ぶりに減少に転じた。自然減が過去最多となり、本格的な人口減少社会に入った可能性がある。主な働き手である15~64歳人口も過去最少であった。


特に、生産年齢人口が減少していくと予測されているなかで、労働力人口の減少が今後の日本経済にとっての不安材料とみなされている。しかし、日本は本当に持てる労働力を最大限活用しているのだろうか。とりわけ女性は働き手として活躍する余地が大きいのではないだろうか。


女性の労働力率は、高度成長期初期の1960年で54.5%と、当時としては欧米諸国と比較して非常に高い数値であった。しかし、その後は低下を続け、1975年には45.7%になった。この1975年を境に反転し、1991年には50.7%まで上昇したが、以後再び停滞し、2009年は48.5%となっている。このあいだに、他の先進諸国の女性の労働力率は急上昇し、いまや日本は女性の労働力率が低い国となった。


年齢別にみると、1960~70年代には、多くの国で労働力率は子育て期にあたる20代後半から30代前半をボトムとするM字型であったが、現在もM字型が続いている国は日本と韓国くらいで、先進諸国や他のアジア諸国は谷のない高原型の形になっている。もちろん、日本でも25~29歳の労働力率は1980年の49.2%から2009年の77.2%へ、30~34歳は48.2%から67.2%へ、45~49歳は64.4%から75.3%へと上昇している。しかしこの上昇は、晩婚化や非婚化が関係している。


というのも、労働力率が上昇しているのは主に独身で子どものいない女性であり、既婚者や子どものいる女性の労働力率はほとんど上昇していない。つまり、晩婚化によって未婚の労働者が増えたことで女性の労働力率が上昇したのであり、結婚・出産した女性が継続的に就業あるいは再就業できる環境が整ってきたことによるわけではない。いわば、出生率を犠牲にして女性の労働力率が上がっているのである。


日本女性が結婚すると退職し、専業主婦になるという形が一般化したのは高度成長期である。この背景として、経済全体のパイが拡大するなかで、税や社会保障、雇用など、制度に合わせて行動を変えてきたという側面が大きい。現在の制度を前提にして労働力の減少を憂う前に、いまだ潜在的に貴重な労働力が埋もれてしまっている状況を改善することが、将来の可能性を見出す上でも重要ではないのだろうか。

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