雲のむこうにあるものは

クラウドサービス導入が官民を問わず活発化している。総務省のスマート・クラウド研究会の資料によると2010年度の国内のクラウドサービス全体の市場規模を6,513億円と推測しており、2015年には大幅に市場が拡大し、1兆8,118億円にまで成長すると見込まれている。


クラウドサービスと一口に言っても、アマゾンのAmazon EC2に代表されるIaaS(Infrastructure as a Service)や、グーグルのGoogle App Engineなどで有名なPaaS(Platform as a Service)、セールスフォースのSalesforce CRMなどが代表として挙げられるSaaS(Software as a Service)などさまざまなサービスがある。
本来であれば、ひとくくりにはできないが、クラウドサービスの共通点を挙げると自社で管理、運用などをしていたデータやシステムをネットワークで自社外に置きクラウドベンダー側で管理、運用などを行うことにまとめられている。
ちなみに、クラウドサービスのクラウドは雲を指している。これはコンピュータシステムのイメージ図でネットワークを雲の図で表していたことに由来している。


クラウドサービスの利点は数多くあるが、最大メリットはコスト削減が挙げられる。大量の情報を専門のシステムと優秀な人材で一元管理することにより、人件費やシステム運用費の圧縮が可能であるということである。


しかし、クラウドサービスにも大きな問題点が指摘されている。それはセキュリティの確保である。市場拡大が見込まれるクラウドサービス市場には雨後の竹の子のように多くのベンダーが乱立し始めている。しかし、現状ではどのベンダーがどれくらいの信用度があるか客観的に判断することは難しい。また、クラウドサービスを運用するデータセンターの所在国によってはデータの検閲や各国の司法制度などによってシステムの停止が余儀なくされるカントリーリスクも指摘されている。
コスト面を重視するあまり雲のむこうにあるセキュリティを犠牲にしては本末転倒である。


クラウドサービスを導入する際は、コスト面のみならず、セキュリティ、障害発生時の対応、サービスの持続性などさまざまな面での判断することが重要である。クラウドサービスの導入増加は世界的な潮流で、避けて通ることは難しい。今後は、クラウドサービスを正しく理解し、雲のむこうにあるものを見通せる人材の確保が重要となる。

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