成長の果実の収穫には時間がかかる
Googleは、米国時間8月25日に開始したGoogle アカウントから一般電話へ発信・通話できる音声通話サービスが初日で100万通話を超えたと同社のtwitter公式アカウントでツイート(twitterを介して外部に発表)した。残念ながら、アメリカ国内のユーザーに限られたサービスではあるが、リリース初日で100万通話を超えた事実を勘案すると、Googleアカウントの潜在的ユーザー数の巨大さがうかがえる。
同じようなサービスでは、エストニアで開発されルクセンブルクに籍を置くSkype Technologiesが提供しているSkypeが世界的に先行している。Skypeはユーザー数が5億人を超えるといわれている。
これらのサービスの利用者が爆発的に増加している最大の理由は、そのサービスの多くが、無料で利用できるということに集約される。しかし、ただ単に無料で利用できるだけの音声通話サービスではここまで多くのユーザーの獲得には至らなかったであろう。
事実、同じような無料音声通話サービスはYahoo!やMicrosoftも無料ボイスチャットサービスを提供している。数年前まで、ボイスチャットサービスは急成長を遂げていたが、現在その勢いはみられない。
Skypeが大きく成長した理由は、同サービスの音声通話の質の高さと、固定電話への通話が可能であることが大きい。特に音声通話の質へのこだわりはユーザーのフィードバックを大量に収集するシステムからも見て取れる。同社では、異なる通信速度をもつ国や地域間でも音声の質を一定化することに力を入れている。
では、日本では同等のサービスがあるだろうか。あえて挙げるならば、ソフトバンクのBBコミュニケーターやNTT東日本のフレッツ・コネクト、NTTコミュニケーションズのドットフォンパーソナルVなどになると考えられるが、いずれのサービスも終了、または終了予定となっている。その理由の多くは、想定する利用者数に達しなかったことや採算化ができなかったこととなっている。
Skypeはパブリックβ版がリリースされてから7年を超えた。またGoogleアカウントの中核となっているGmailもサービス提供から6年を超えている。
日本では、産業を生み出すイノベーションが起こっていないと嘆く人も多いが、現在ある新しい産業も長い時間をかけ育まれてきたものであることを意識すべきではないだろうか。将来、日本に大きな果実をもたらすような技術や企業などを育める、中長期的な視点に立った投資が官民ともに行われることが望まれる。