インフルエンザの予防接種がスタート
10月1日、新型インフルエンザの予防接種が開始された(2011年3月31日まで)。昨年の予防接種は、重症化の恐れのある乳幼児や妊婦、高齢者など接種の優先度が決められたが、厚生労働省によると今年は希望者全員が受けられ、新型および季節性2種類に効き目のある3価ワクチンの接種が広く実施される。
最新の感染状況をみると、同日に発表された国立感染症研究所の資料では、9月第4週に全国で202件となっている。首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)と大阪、沖縄の発生が2桁で、その他の地域でも幼稚園の休園や中学校の学年閉鎖などはあるものの、現在のところ注意報レベルおよび警報レベルに達する保健所地域はゼロである。
こうしたなかスタートした今年の予防接種だが、出足は昨年に比べて大幅に遅い。これはインフルエンザの落ち着きだけでなく、行政による影響も大きい。今年の3月、予防接種法の改正案が通常国会に提出されたものの、6月の国会閉会以後、参院選、民主党代表選、第2次菅内閣発足と政局が安定しないなかで、いまだに成立していない。このため料金設定が土壇場まで決まらず、各自治体から住民へのワクチン接種の告知が遅れ、周知が十分になされていない状況にあるのだ。
新型インフルエンザの大流行が景気に及ぼす影響は大きく、昨年は5月に新型インフルエンザの国内初感染が判明してからは、修学旅行や地域振興イベントの中止など外出を控える動きが広がり、飲食店やホテル、観光地などにも影響が広がった。企業でも感染地域への出張制限や感染者の出勤停止措置で操業などへの影響がみられた。大流行した場合には、55%の企業で業績に悪影響が生じるとの調査結果もある(TDB景気動向調査特別企画2009年9月)。
WHO(世界保健機関)が昨年6月に宣言したパンデミック(世界的大流行)の終息宣言が出されたのは今年の8月で、流行の影響は長期間に及ぶ。目に見えないものだけに、一度広がると不安心理は増幅し、全国でパニックに陥る恐れもある。政府や報道機関には正確で冷静な情報発信が求められることはもちろん、ワクチンが100%の感染防止法ではないことから、手洗いやうがい、マスクの着用など、基本的な対策を個々人が行っていくことが大切だ。
10月4日には多剤耐性菌(NDM1)の国内初の感染例が報告されている。細菌との闘いは人類の宿命とも言われるが、行政、個人ともさらに危機意識を高く持って行動していくことは、大流行やさらなる新型への変異速度を遅らせ、新薬の開発をとおして細菌を封じ込めることにつながる。人類の明日の笑顔にもつながるはずだ。