国勢調査の結果は大いに活用すべし

5年ごとに実施される国勢調査が行われている。今年は西暦の末尾が0の年であるため、10年に一度の大規模調査である。国勢調査は3カ月以上日本に住んでいる人が対象で、国籍を問わず、10月1日現在の国の情勢を把握することを目的としている。


近年、国勢調査の調査票の回収率が低下していることが問題となっており、未回収率は1995年で0.5%だったものが、2000年には1.7%、2005年には4.4%にのぼった。そのため、今回は従来の国勢調査員による訪問回収だけでなく、全国で郵便での返送が可能となったほか、東京都ではインターネットによる回答もできるようになった。


国勢調査は、政治や行政施策の基準となる統計となること、その他のさまざまな統計を作成する際の基盤となる基礎データを提供すること、そして民間企業や研究部門における利用などに使われる。


特に、民間企業での利用方法で多いのが、国勢調査から得られる人口・世帯構成や人口の地域分布などから、市場規模や需要動向の見積もり、新商品開発、出店戦略などをたてることである。例えば、単身世帯が増えていると食生活が変わり、家族で食べる鍋料理などは需要が減るかもしれない。そこで、調味料であれば家族単位から個人単位に合わせた商品展開にする。あるいは、人口分布が郊外から都心に移っているのであれば、自動車へのニーズが変わるかもしれない。そこで、ファミリーカータイプよりも軽自動車など小回りのきく小型車開発に力を入れる。また、郊外に新店舗の出店を計画しているのであれば、店舗面積をどの程度にし、どのような品揃えにするのかを考える。あるいは、高齢化の進行している地域があれば、高齢者のニーズに合わせて、コンビニなどから栄養等も考えた食品の宅配サービスを提供、など。


上記以外にも、国勢調査の結果を使ったビジネスへの応用は数限りなく考えられるだろう。将来の生活者の姿をイメージすることで、新たなチャンスを発掘することが可能となる。今回の国勢調査の結果は、2011年2月に人口速報集計が公表され、以降、さまざまな集計結果が公表される予定となっている。2010年の国勢調査は約643億円を投入して実施されるものである。日本は国際的にみると低い支出金額に抑えている方であるが、これだけの国費を投じて実施する調査である。利用しない手はないだろう。

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