客待ちタクシーの解消を

2010年12月03日

夜になると駅周辺や繁華街などでタクシーの行列を目にすることはないだろうか。近年、繁華街などにおける乗客を待つタクシーの違法駐車や交通渋滞が社会問題となっている。東京都では、渋滞解消対策のため国土交通省関東運輸局、警視庁、中央区、タクシー業界等と連携し、客待ちタクシー待機列解消に向けた実証実験を銀座地区で実施することとなった。客待ちをするタクシーを既存の駐車場に待機させ、待機列による渋滞の解消を目指す。東京都以外でも、各地で違法駐車の取り締まりやタクシープールの設置などの対策が実施されている。


客待ちタクシーの増加の原因には、消費者の節約志向から乗客数の減少や、2002年2月の需給調整の廃止等の規制緩和後、タクシー業者の新規参入や、台数の増加によりシェアを伸ばすために車両数を増加させたことなどがある。そのため、最近では減車に向けた動きも出ている。


客待ちタクシーのドライバーは、少しでも多くの収入を得たいという気持ちもあり利用者を待っているのだと思う。タクシーを取り巻く環境は非常に厳しく、全国ハイヤー・タクシー連合会がまとめた「タクシー運転者の賃金・労働時間の現況」では、平成21年のタクシー運転者(男)の賃金の年間推計額は280万7,500円で前年に比べ16.2%減少した。一方、全産業男性労働者の年間推計額は前年比3.9%減の529万8,200円で、タクシー運転者(男)と全産業男性労働者との格差は249万700円となり、前年(224万700円)から25万円拡大した。


しかし、長時間路上で待機することは歩合制賃金であるタクシードライバーにとっても、収入にならない時間が増え、長時間労働を招くなどマイナスであろう。違法駐車や交通渋滞は地域住民に迷惑がかかるし、事故の原因ともなる。また、CO2の排出により環境にも悪い。地域の交通状況の改善のための制度づくり、運用が求められている。そしてその制度のなかでタクシードライバーがしっかりと収入を得られ労働環境が改善されることが大切だ。今後は忘年会シーズンとなり、タクシーを利用する客も増えるだろう。しかし、供給過剰に変わりはなさそうで、各地の対策により、渋滞を緩和することが必要だ。

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