求められる継続的な既卒者採用

師走の声を聞くと、受験シーズンも追い込みの時期となる。
2010年は国公立大学、私立大学ともにやや狭き門となった。私立大学は、入学定員約45万人に対して志願者数は前年比3.5%増の318万人、志願倍率(志願者÷入学定員)は7.05倍で前年比0.22ポイント増となった(私学経営情報センター)。一方、2010年の国公立大は入学定員約10万人に対して、志願者数は前年比3.0%増の49万人で、志願倍率4.9倍で同0.1ポイント増となった(文部科学省発表)。


表面上は厳しい受験戦争は続くが、私大経営では定員割れという現実がある。私学経営情報センターがまとめた「学校法人基礎調査」によると、2010年の定員割れの私立大学の割合は38.1%(569校中217校)で4割近く、特に短期大学は62.5%(344校中215校)と6割強が定員割れという厳しい状況だ。一方、国公立大学には定員割れはない。
やはり国公立大学と私立大学の学費の違いも大きいのだろう。国立大学を例にとると、4年間の学費(入学金・授業料、昼間部・文系)の約240万円に対して、私立大学の同学費(入学金・授業料・施設設備費、昼間部・文系)は約386万円と1.6倍だ。子を持つ親にとって、目減りする所得のなかでは是非とも国公立大学を望むという思いも出てきて当然だ。


ただ大学に進学しても、就職という次のハードルが高い。2010年10月調査の就職内定率は大学57.6%(前年比4.9ポイント減)、短期大学は22.5% (同6.5ポイント減)と前年に比べ大幅に減少した。運営主体別では、私立大学の就職内定率55.8% (同3.8ポイント減)に対して、国公立大学の就職内定率は63.2%と高いが同8.1ポイント減と大幅に悪化しており、国公立、私立大学いずれも悪化した。


こうした若年層の就職難を食い止めるため、厚生労働省はこの11月に、「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」を改正、卒業後3年以内の既卒者も新卒枠で応募を受け付けるなどの項目を付け加え、既卒者採用企業への奨励金も創設された。


円高を背景に海外進出による国内産業の空洞化、企業のグロ―バル化の動きを背景にした外国人採用や即戦力を希望する企業の中途採用など、採用の多角化の動きがあるなかで、若年層の雇用環境の改善にどこまで有効な政策となるのか。今後の採用状況が気になるところだが、その前に企業業績の改善がなければ、継続的な採用増につながらない。既卒者採用企業への奨励金で投入される税金が一時しのぎになってしまい有効活用されないことが懸念される。

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