この5年を糧として未来に希望を
6月2日午後、自民党・公明党・たちあがれ日本の3党が提出した内閣不信任決議案は迷走のすえに否決された。震災によるこの非常時に、政権を担う民主党の分裂は一時的に回避されたが、内政・外交とも今後の政策に対する不透明感は一段と深まった。
前首相の鳩山氏が景気対策の迷走や自身の政治資金問題、「最低でも県外」と発言した普天間基地の移設問題などで辞意を表明したのが、ちょうど1年前の6月2日である。
「国民の生活が第一」という理念のもとに多くの国民から喝采を浴びてスタートした現政権への信頼はすでにない。2009年の流行語大賞に輝いた「政権交代」(受賞者は鳩山氏)や同年の「今年の漢字」となった日米の政権交代を象徴する「新」はなんだったのか。鳩山政権の崩壊は近年定着してきたマニフェスト選挙を崩壊させることともなった。
その鳩山政権の後を引き継いだ菅政権だが、参院選前の唐突な「消費税10%」発言による支持率低下に始まって、最近でも「お盆までの全仮設住宅設置」やドービル・サミットにおける「太陽光パネルの1,000万戸設置」など、関係閣僚との調整もない不用意な発言が相次いでいる。小沢氏との党内対立や不十分な景気対策、震災対応への批判も多く、「最小不幸社会の実現」や「平成の開国」にはほど遠い状況にある。
そしてついに菅首相は内閣不信任決議案の採決を前にして「一定のメドがついた段階で若い世代に引き継ぎたい」と発言した。
しかし、復興政策にメドをつけることができるのか。今回の政局混乱と辞意の表明で、国内外からの信頼回復はもはや困難で、復興支援もままならない状況に陥っていく恐れが強い。
こと、ここに至っては衆議院解散によって国民の信を受けた政権をできるだけ早期に発足させる必要がある。
総選挙において改めて各党がマニフェストを国民に提示し、その必要性や実現可能性も含めて国民にていねいに説明し、政治の信頼を取り戻す第一歩とすることが今後の日本にとって不可欠な道筋だ。
小泉政権以後、安倍氏・福田氏・麻生氏・鳩山氏と4代続けて1年で倒れ、菅政権も瀬戸際に追い込まれている。これまでの5年を決してムダにせず、大きな糧として、日本の未来を希望あるものとしていかなければならない。