日本独自GPSへの期待

2011年08月03日

「準天頂衛星を利用した新産業創出研究会」が6月末に初会合を開いた。日本版全地球測位システム(以下、日本版GPS)を利用した新産業創出のための官民一体の研究会である。
現在利用しているGPS はアメリカが管理・運営するGPS衛星からの情報に委ねられており、位置情報の精度は民間用には低く抑えられている。また不測の事態が生じた場合、十分な位置の把握ができなくなるリスクを抱える。同研究会では、こうした現行GPSの抱えるリスクを補完し、日本独自の測位衛星を配備することを目指している。


日本版GPSの技術実証・利用実証実験のため2010年9月に測位衛星「みちびき」が打ち上げられたが、1機では日本天頂に滞在する時間が約8時間のため、24時間安定的な情報提供のためには3機、メンテ時の予備機1機を含め最低4機以上が必要で、この計画はまだ始まったばかり。


経産省は、今後もGPSを活用した製品・サービスの世界市場は成長し、2025年に56兆円に達するとみており、高精度の日本版GPSで国内産業の活性化を目指す。
日本版GPSをもつことで、位置情報の精度は現在の誤差、約10メートルから1メートル以内へと10倍以上向上し、商品・サービスに応用が可能となる。


中国の高速鉄道の衝突事故があったばかりだが、列車や自動車などの交通機関の衝突防止装置など事故回避技術にも役立てることができる。
また、東日本大震災で災害への対策が不十分だったとの非難が多かったが、津波観測に利用されているGPS波浪計の精度向上、原発事故などによる危険地帯への遠隔操作ロボット運用への応用など、災害時の対応にも大きな効果を発揮しそうだ。
インターネット、GPSともに生まれは軍事の技術革新だったが、平和利用への転用でその技術が開花することが待たれる。

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