デンマークの脂肪税で考える健康目的の税制
10月1日、国内では子ども手当の見直しや厚生年金保険料の引き上げが実施され、暴力団排除条例が東京と沖縄の追加により全国での施行が完了した。また、食品では小麦やバターが値上げされるなど、毎年のことながら生活面で変化の多い10月である。
デンマークでは10月1日に世界で初めて脂肪税が導入され、話題となっている。ご存じの方も多いと思うが、飽和脂肪酸が一定以上含まれる食品に対する課税である。
個人の体脂肪の多寡によって課税されるわけではないが、同国政府は課税の目的を健康増進としているので、要はそれらの食品を多く摂って太っても構わないと思う人ほど多く税金を払うこととなる。こうしたことから、やや飛躍した表現だが、肥満税とも言われている。
この7月にはハンガリーでジャンクフード税(ポテチ税)も成立している。ヨーロッパは政治、経済をはじめ社会保障や環境問題などでも世界をリードしてきた。そのヨーロッパが健康を目的とした税制を相次いで打ちだしているということは、いずれそれが世界標準となる日が来る可能性も十分に考えられる。
日本でもたばこ税増税への賛否が議論されている。たばこ税(たばこ事業法)本来の法的根拠とは異なる健康目的、懲罰的性格での政府の増税姿勢に批判も多いが、誰しも財政再建、健康増進そのものへの異論はないと思う。
20世紀はあらゆる面で成長の世紀であったが、21世紀はそれによる負の遺産を精算し、新たな世界をつくる責任がある時代と言われる。それは環境だけでなく、人々の健康についても言えることだろう。
このような社会の動きのなかで、日本も健康を視点においた新しい柔軟な税制を構築していくべきではないか。物品やサービスで縦割りにするのではなく、健康をキーワードとして横断が可能な仕組みを採り入れるのである。
政府や自治体は医療費など社会保障費の増大が財政課題となるなかで、人々が心身とも健康的な生活を送ることを推奨している。新しい税制のもとでは、スポーツ用品やウェア、スポーツクラブやフィットネスクラブの利用料金などは基本の税率よりも優遇されるというのも一案だ。
経済だけでなく、人々の生活そのものに大きくかかわる税の在り方について、もっと踏み込んだ議論が活発になされることを期待したい。