命を託す情報公開の遅れ
宮城県石巻市の災害ボランティアセンターで、医師免許を持っていないのに医師を名乗り医師活動をしたニセ医者が逮捕された事件は記憶に新しい。災害ボランティアセンターでもこのニセ医者を受け入れる際に医師免許の確認をしていなかったが、災害緊急時でいたしかたない要素はある。ただ医師免許や医師であるかの確認手段ができたとしても、現行のシステムは、あまりにも稚拙で情報も少ないという現実がある。
厚生労働省は「医師等の行政処分のあり方等に関する検討会(2005年12月)」において、国民の生命・健康を保護する観点から、医師等でない者からの医療の提供等を防止するため簡単にホームページ上で資格確認を可能にする必要性があるという指針をまとめた。その後、準備期間を経て2007年4月1日から医師が実在するか否かを確認するための「医師等資格確認検索システム」が稼働し、現在、WEB上で医師等の氏名等の検索が可能となった。
ただ、同ホームページ上で検索後に表示される内容は、職種(医師・歯科医師の別)、氏名、性別、医師登録年、備考(該当する者に限り行政処分に関する情報)に過ぎず、医療事故などで受けた行政処分の情報が検索結果に表示されるのは、原則として医師の業務停止期間中のみに限られる。過去に何度も行政処分を受けている場合も履歴は閲覧できないのである。一度、検索していただくとわかるが、命を託す先である医師の情報としては、あまりにも情報不足である。
また、「医師免許」についても医師国家試験に合格した者が住所地の保健所(一部県については県庁)に申請し発行され更新は不要となっている。免許に記載されているのは、氏名と住所、登録番号にあたる医籍(医師免許証所有者の氏名・戸籍などを登録する厚生労働省の帳簿)のみで、写真もついていない。実物は学校の卒業証書のような様式の紙1枚に過ぎない。
医師は人の命を預かる尊い仕事の1つである。このIT時代、運転免許証でもICチップが埋め込まれている。将来、医師はICカードが埋め込まれた医師免許カードを携行し、必要とあれば、いつでも提示する義務を有し、登録情報や行政処分歴が確認できるような時代がくることを切望する。