2011年の「流行語大賞」と「今年の漢字」
12月1日に毎年恒例の「流行語大賞」が発表され、「なでしこジャパン」が年間大賞に決まった。震災後の日本に明るい希望を与えたというのが受賞理由であり、多くの方が納得するものだと思う。トップ10には「3.11」や「帰宅難民」、「風評被害」など震災にかかわるものが半数を占め、人々に与えた衝撃やその影響の大きさがうかがえる。
今年、TDB景気動向調査に寄せられた累計2万5千件の企業の声のなかでも、「震災」を含むものが5千件を超え、圧倒的多数となった。これに次いで「消費」、「工事」、「自動車」(いずれも約1千200件)が上位となり、「復興」(約1千件)も多かった。そのほかでも、「放射能」、「節電」、「電力」、「風評被害」など震災に絡むものが目立った。
2011年は震災を切り離しては語れない一年となったが、もう1つ注目されるのが、毎年12月12日に清水寺で発表される「今年の漢字」である。ここ3年は「変」(2008年)、「新」(2009年)、「暑」(2010年)であり、特に「新」は「流行語大賞」にも選ばれた「政権交代」(受賞者は鳩山首相)とともに人々に明るい希望を抱かせた。だが、その後の政治不信の増幅と失望は現在に至っても解消されてはいない。
今年は「絆」が有力と言われている。私案としては、震災からの復旧・復興と来年以降の日本の復活を期して「復」なども考えられるが、そのほかいくつか候補を挙げてみる。
震災に加えて、タイの洪水被害や夏場の豪雨災害も目立った「災」。震災がさまざまな変化へのきっかけをもたらしたほか、ユーロ危機、新興国の景気減速、TPP交渉の開始など多くの節目ともなった1年であり、電力不足による節電・省エネ意識の高まりもみられた「節」。災害などに対する安全性への過信を省みる意味も込めて「省」も考えられる。
さらに、日本サッカー史上で最高の栄冠を手にした女子W杯優勝や歴史的な円高などで「高」。
震災により家族愛が見直されたほか、子役の枠にとらわれない活躍で芸能界を席巻し、2011年赤ちゃんの命名ランキングでも女の子部門の第7位に急浮上した芦田愛菜さんにちなむ「愛」。
家族愛だけでなく、震災や円高などであらゆる常識が見直される機会となったこと、学生の就活や若者の婚活、政策でも小手先ではない中身が求められ、野田新首相の率直な物言いも好感をもって迎えられた「直」も、今後を切り開くキーワードになりはしないか。
なお、「今年の漢字」の第1回は阪神・淡路大震災が起こった1995年であり、その年は「震」が選ばれている。
しかし、今回発表される「今年の漢字」はこの1年を総括するだけでは物足りない。今後に希望の光りがみえる一字が欲しい。私たちはさまざまなことが起こったこの1年を新たなスタートとして、日本や世界の明るい未来につなげていかなければならない。