社会保障と税制、細部まで目を行き届かせた議論が重要

新年早々の1月6日、閣議において「社会保障・税一体改革素案」が報告された。いうまでもなく、社会保障や税制の改革はこれからの日本社会においても、また持続可能な制度にする意味においても不可欠である。しかし、その中身に対する賛否はまた別である。往々にして総論賛成各論反対となる所以であろう。


今回の改革案では多くの対策が含まれている。たとえば、社会保障に関するだけでも幼保一体化、医師確保対策、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、年金制度の最低保障機能の強化として低所得者への加算や受給資格期間の短縮、物価スライド特例部分の解消、マクロ経済スライドの再検討、被用者年金の一元化、第3号被保険者制度の見直し、貧困化対策など、数多くの項目が挙げられる。


一方、税制については消費税の社会保障財源化に向けた消費税率の引き上げが最大の焦点となっているが、個人所得税、金融所得税、個人住民税、法人課税、資産課税、その他地方税など多岐にわたる。そして、その多くが負担増をともなう内容となっている。


しかし、問題はこれらをどのタイミングで実施するか、また国民の理解を得るためにどのように説明するかにある。今回の改革案では消費税は2回に分けて引き上げる工程となっているが、1989年の消費税導入や1997年の消費税率引き上げは1回での実施だった。企業からは「1回で引き上げられた方が取引先に転嫁の理解を得やすい」という声も聞かれるなど、いかに適正な転嫁を可能とするかが大きな課題となるだろう。ただ、適正転嫁などへの取組は4行程度の本文と【別紙】で触れられているだけであり、必ずしも十分な内容とは言いがたい。"神は細部に宿る"である。社会保障や税制の改革が必要なことは多くの人が認識しているだけに、経済・社会への影響を踏まえるためにも細部まで目を行き届かせた議論が何よりも重要である。

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