武道必修化の成功を祈る

2012年03月05日

2012年4月から中学校での武道必修化がスタートする。
これは2006年に60年ぶりに改正された教育基本法の理念にのっとったものであり、文部科学省によると必修化の目的は「武道に積極的に取り組むことを通して、武道の伝統的な考え方を理解し、相手を尊重する姿勢を養う」こととしている。


だが、その目的を達成するのは現時点ではまだまだ相当にムリがあるように思う。体育教師が元々、武道の指導者資格を持った者であるなら話は別だが、ある自治体では6日間の講習で柔道の黒帯(初段)を与えていたことが明るみとなるなど指導者の乱造が問題視されている。そもそも初段の者に指導者としての力量が備わっているはずもなく、それにお墨付きを与えるのはムチャな話である。


さらに、安全性の問題も大きく、特に柔道では死亡事故を含む重大事故の多発が懸念されている。依然として、親が子どもたちを安心して学校に預けられる環境が整っているとは言えず、武道必修化の直前となったいま現在でも必修化への反対意見は根強い。


学校教育は、個々人の運動能力にかかわらず誰にでも安全であることが求められる。武道も必修化となればもちろんではあるが、その安全性を追求することで、武道が本来持っている厳しさなど多くの要素を削ぎおとしていかざるを得なくなるかもしれない。
こうしたなかで、どこまで文部科学省の唱える目的を実現させて、次世代を担う子ども達の心身の成長につなげていけるか。
私自身にも明確な答えはまだないが、まずは安全を最優先にしてスタートし、そのなかで試行錯誤をしながら、よりよい教育方法を確立していくしかないのであろう。武道必修化の無事の成功を祈るとともに、武道を学ぶことで将来の国力の源となる子ども達のなかでさまざまな力が培われていくことを願ってやまない。

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