ご当地グルメで町おこし
地方では過疎化や高齢化などによる衰退が問題となって久しい。特になじみのある町が衰退して行ってしまうのは非常に惜しいことだ。自分の産まれた故郷や町などがいつまでも輝いていてほしいと思うのは当然のことではないだろうか。私の出身地は栃木県宇都宮市だ。「宇都宮」と言うと多くの人が思い浮かぶのは「餃子」だと思う。総務省の家計調査では、宇都宮市の2011年の1世帯あたりの餃子への総支出額は、長年続いた第1位から第2位(3,737円)となり、第1位の浜松市(4,313円)を566円下回った。この統計はスーパーなどで惣菜として調理された焼餃子を購入した金額のみを対象としており、宇都宮市は震災による直接的な被害や節電などによるスーパーなどの営業時間短縮なども影響した。2位とはなってしまったが、宇都宮の餃子のイメージは保たれている。
宇都宮が餃子で有名になったのはさほど昔のことではない。1990年の市役所の中堅職員を対象とした研修で、何か町おこしにつながるものはないかと模索したところ、当時観光係長であった沼尾博行氏が、総務省の家計調査で、「餃子」の購入金額が全国主要都市のなかで1位であることに気付き、餃子を宇都宮名物として使えないかと考えたのが始まりだ。
沼尾氏は「行政側が旗を振るだけでは町おこしは実現しない、店側が主体的に活動をしなければならない」と考えた。そこで、市内の餃子専門店をめぐり、宇都宮名物として餃子を売りだそうと店主を説得し始めた。初めのうちは餃子店の反応は鈍かったが、沼尾氏の粘り強い説得の末、約2年後に餃子店の賛同を得て宇都宮餃子会が結成された。そして、餃子マップの作成、餃子像の設置、宇都宮餃子祭りなどのイベントの開催などが実施された。加えて、テレビ番組とのタイアップで宇都宮餃子の町おこしの様子が紹介され、餃子が浸透していった。現在では休日の食事時ともなると人気餃子店の前は大行列となっていることもある。目立った観光地ではなかった宇都宮が、餃子を食べるために観光客が立ち寄る街となった。
かくして、餃子の街・宇都宮が定着したのだが、餃子会発足後、行政側からは特に予算面での補助はなかったそうだ。補助金がなくても、アイディアと熱意で町おこしはできるのだ。宇都宮の餃子以外にも、「B級ご当地グルメ」の人気は非常に高く、B1グランプリなどのイベントも盛況だ。地元に住んでいれば当たり前のことのなかに、特色になりうるものは必ずあるはずだ。地域独特の文化が衰退しつつあるともいわれる現代ではあるが、地域の特徴をつかみ、うまくPRすれば、必ず町おこしはできるのである。町おこしによって元気な地方都市が増えていくことが、日本全体の活性化にもつながると確信している。