4月の貿易赤字を考える
貿易統計(財務省)によると、2012年4月の貿易収支(速報値)は5,203億円の赤字であった。3月(845億円)に続いて2カ月連続の赤字である。4月の赤字としては、第二次オイルショックが影響した1980年4月(5,083億円)を上回り過去最大となった。内訳をみると、輸出は前年同月比7.9%増(2カ月連続増)、輸入は同8.0%増(28カ月連続増)でともに拡大している。主な増加要因は、輸出が自動車・同部品や映像機器で、輸入は原粗油、液化天然ガス、通信機であった。
また、貿易相手国別にみると、対アメリカへの輸出:42.9%増、輸入:4.4%増で4,258億円の黒字、EUへは輸出:1.9%減、輸入:4.2%減で614億円の黒字、対アジアへの輸出:2.6%減、輸入:1.8%増で4,717億円の黒字となっている。しかし、中国に対しては輸出:7.1%減、輸入:7.5%増で2,742億円の赤字となり、4月の貿易赤字の多くを占めている。
さらに気になるのは、輸入が28カ月連続で増加しているのに対して、東日本大震災でサプライチェーンが寸断され、大きく落ち込んだ輸出が十分に回復していないことである。
これらの結果と、2011年が31年ぶりの赤字となったことを考え合わせると、今後の貿易収支について悲観的に考える方も多いのではないだろうか。とりわけ原粗油や液化天然ガスなど化石燃料が輸入を押し上げていることは、いうまでもなく、原発事故を発端としてすべての原発が停止状態にあることに加えて、現時点で再生可能エネルギーにこれを補うだけの力がないことに起因する。
短期的には、原発が再稼働していくことで赤字は縮小すると考えられる。さらに、生産回復による輸出拡大を促していくことも重要であろう。
もっとも、貿易は黒字だから良くて、赤字だから悪いというものではない。また、少子高齢化が進む日本において、今後、経常収支も赤字化していくことは必然といえる。ただ、日本の経済構造がそのような状態に対応する準備ができる前に、震災など外的ショックによって急に訪れていることが問題であり、不安感を高める一因となっているのではないだろうか。当面の対策と、中長期的な対策は異なるものであり、それぞれを整える必要がある。