依然低い設備投資意欲
6月1日に財務省が発表した2012年1-3月期の法人企業統計(金融業・保険業を除く)によると、設備投資額(ソフトウエアを含む)は全産業で前年比3.3%増となり、2期連続の増加となった。2期連続で改善したとはいえ、TDB景気動向調査に企業の皆様から寄せられた声には、「企業の設備投資が落ち込んでいる。昨年からの節電による心理的要因があるように感じる」(建設)、「大口案件の減少、設備投資は延期が目立つ」(機械製造)など厳しいものも多い。
TDB景気動向調査には、設備投資に関する指標である設備投資意欲DI(0~100、50が判断の分かれ目で、50より水準が高ければ設備投資意欲の高まり、低ければ後退を表す)がある。全体の動向としては、リーマン・ショック後に急落し、2008年9月は38.6であったが、12月には28.9まで落ち込んだ。その後緩やかに回復し、2011年2月には44.1となっていたが、東日本大震災の影響で2011年3月(38.0)に前月比6.1ポイント減と再び大きく悪化した。しかし、復旧・復興需要もあり翌月には増加に転じ、改善傾向となった。
今月の調査結果である2012年5月(45.0)は生産活動の低下などから前月比0.9ポイント減とやや悪化した。震災直後と比べると回復しているが、過去最高である2006年3月の51.2と比較すると大きく下回っており、好調であるとは言い難い。
51業種別では「電気通信」と「その他小売」が58.3で第1位、次いで「医薬品・日用雑貨品小売」が55.3、「医療・福祉・保健衛生」が51.7となった。「飲食店」「リース・賃貸」もともに50.6と50を超えた。設備投資意欲DIが判断の分かれ目である50を上回り、設備投資意欲が高いといえる業種は51業種中7業種にとどまり、ほとんどの業界では意欲は低い状況となっている。設備投資の波及効果が大きい製造業では政策支援効果により、「輸送用機械・器具製造」が49.0でトップとなり、次いで「パルプ・紙・紙加工品製造」47.8となった。製造業のなかでは水準は高いものの、50を下回っており、慎重な姿勢がうかがえる。
設備投資意欲DIは目に見えない意欲を数値化したものであり、設備投資意欲が少しでも高い業界を探り、営業などをかける際などに、お役に立てるのではないだろうか。
円高、原材料高、夏場の電力不足、世界経済の動向など懸念材料は山積しており、先行き不透明感が強いなかで企業は設備投資に慎重にならざるを得ない状況が続いている。設備投資には波及効果が期待され、「投資が投資を呼ぶ」といわれることもあるが、今は設備投資が抑制されることで負の波及効果をもたらしているといっても過言ではないだろう。国会では消費税増税問題が中心となっているが、設備投資の増加、景気回復のためにも、先行き不透明感の要因となる懸念材料を払拭するための政策が必要である。