需要拡大が見込まれる水ビジネス

2012年07月04日

世界の水需要は、新興国の経済発展や人口増で急速に増加しており、インフラの整備が求められている。また、世界各国で水不足が懸念され、海水の淡水化、生活排水や工業廃水を上水として利用できるレベルにまで処理する造水市場も、今後の成長が期待されている。生活や経済活動に欠かすことのできない水を供給する水ビジネスは、上下水道事業をはじめ、海水淡水化技術や高度処理技術、下水排水処理技術など裾野は幅広い。世界的な水ビジネスの市場規模は2025年には100兆円を超えるとの説もある。


日本政府は新成長戦略のなかで、水関連インフラの輸出もその柱の一つとしている。しかし、海外の水ビジネス市場は、早くから民営化され実績のある欧州の水メジャーと呼ばれる企業が席巻している。さらにシンガポールや韓国などの企業も積極的に海外展開を進めており、競争は激しさを増している。また、グローバル市場ではプロジェクト全体の運営・管理までを含めた包括的なサービス提供が要求されるが、日本は優れた技術を持っているものの、水道事業の民営化は一部にとどまり、民間企業には運営管理の実績がほとんどない。そのため、現在水道事業の運営を行っている自治体との協力が必要となる。


こうしたなか、官民連携による海外展開に向けた取り組みを推進するため、2010年夏から経済産業省、国土交通省、厚生労働省が事務局となり、海外水インフラPPP協議会が開催されている。PPPとはパブリック・プライベート・パートナーシップ(Public Private Partnership)の略称で、国や地方自治体が提供してきた公共サービスに民間の資金や技術、ノウハウなどを取り入れることを指す。財政負担を減らしながら良質な公共サービスを提供することや民間企業にビジネス機会を提供し、経済の活性化を図ることなどが狙いとなっている。また、独自に民間企業と連携を進めている自治体もある。最近では上下水道分野の高度な技術、ノウハウを国際貢献につなげるため、神奈川県川崎市で上下水道局が官民連携で水ビジネスを推進する組織を設立するなどの動きがあった。


国内は人口減少により市場の拡大は難しいが、海外市場は新興国を中心に拡大が見込まれる。新興国でも安心・安全な水が供給され、世界の水不足の解消に貢献し、日本の成長分野となるよう、官民挙げてさらに取り組みを進めていく必要がある。水道事業の民営化や官民連携にはさまざまなハードルがあるが、日本が遅れている間にも世界の企業が市場を拡大している。実績の乏しい日本はODAを活用するなどの工夫を行い、市場を開拓するべきだ。また、海外のように民間に包括的な委託をすることやトップセールスを行う事も視野に入れ、官民連携を強化した体制を構築していく必要があるのではないだろうか。

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