逆風のなかで好影響を受ける企業
9月中旬以降の反日デモの発生により、日本企業が襲撃を受けるなど、さまざまな被害が発生したなかで、今月のTDB景気動向調査の特別企画「中国との関係悪化に関する企業の意識調査」では、約3割の企業が悪影響と回答する結果となった。連日報道されている状況を考えると少ないような気もするが、日本の経済規模に対する中国との取引額を考えると、被害の影響は大きいともみることができる。他方で、ほんのわずかではあるが、一部で好影響・売り上げが増加と回答した企業もあった。
どういう企業で売り上げが増加しているのだろうか。「増加」と回答した企業の声には、「10月から取引先が現地仕入れ先から日本での仕入れ(当社)に切り換えた」(印刷、東京都)、「木質家具製品など、日本メーカー・バイヤーは、仕入先を中国から東南アジアへシフトしてきている。当社はマレーシア・ベトナムに製造拠点(現地法人)があり、そのため受注増となっている」(木材家具製造、岐阜県)、「相見積で中国に仕事を取られていたが、中国企業の仕事放棄により、仕事が回ってきた」(情報提供サービス、沖縄県)などが挙がった。
売り上げ増となった企業は、安価な中国製品とバッティングしており、これまで価格競争で苦戦を強いられていた企業や、日本国内や他国への代替え需要を取り込める企業などである。さらに、「食品輸入価格が上昇しており、国産食品が盛り返す期待がある」(食品小売、大阪府)など、今後に期待する声もあった。
好影響を受ける企業があることに驚いたが、どんなことでも異なる立場があるということだろうか。現在好影響を受けている企業が一時的な好影響にとどまらず、競争のなかで磨いてきた強みをアピールし、「やはり日本の製品がいい」などと顧客に認識され、リピーターを獲得して、少しでも元気になってほしい。また、今後日中関係悪化の影響が拡大していく懸念があるものの、これを機に視点を変えて、日本回帰や中国以外の国とも関係を構築することで生産性や品質の向上やコスト削減につなげるなど、逆風を追い風にする力を日本の企業は持っていると思いたい。追い風と変える企業が一社でも増えることを望む。